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【車衛東弁護士チームニュースレター】2021年1月分(第七号)

中国の最新法令情報や企業によくある法的問題とリスク、当チームの担当した成功案件について解説するニュースレターの日本語版をお届けいたします。


一、最新法律情報


1.2020 年 10 月 17 日、全国人民代表大会常務委員会は『中華人民共和国特許法』(以下『特許法』)の修正に関する決定を発行し、現行の『特許法』の多くの面で重大な修正がされました。当決定は、2021 年 6 月 1 日から施行されます。

中国人弁護士による解説

1.1 今回の改正では、匠権件の期限が従来の 10 年から15 年に延長されました。

1.2 今回の改正では、特許出願及び特許権の行使過程における誠実信用原則が新たに追加されました。権利者は、特許権を濫用して公共の利益または他人の合法的権益を損なってはならず、特許権を濫用して競争を排除し、又は制限する場合、独占禁止に及ぶ可能性があります。

1.3 改正後の『特許法』の規定によると:職務発明創造の出願特許の権利はその組織に属し、出願が承認された後、その組織が特許権者となります。当該組織は、法に基づき職務発明創造の特許出願権及び特許権を処置し、関連する発明創造の実施及び運用を促進することができます。

本改正は組織の発明創造の意思決定の過程を簡素化し、組織が特許の実施及び運営に関する際の自主権を付与し、企業が特許権をより商業化することを促進することに有利となります。

1.4 改正前の『特許法』の規定によると、特許権侵害の賠償額は権利者が権利侵害によって受けた実際の損失によって確定がされます。今回の改正では、権利侵害者が権利侵害によって獲得した利益に基づいて計算方式を確定することが追加されました。二つの計算方式を並行して、特許権者は自身の実際の損失または権利侵害者の侵害により獲得した利益に基づき損害賠償額を計算することを選択することが出来ます。

1.5 今回の改正は特許侵害の訴訟の時効が従来の 2 年間から 3 年間に延長され、また起算期日の条件が引き上げられています。侵害行為を知り得た日或いは知り得たと見なされる日から、侵害行為を知るべき日から訴訟の時効が起算されと改正されました。


2.2020 年10 月29 日、国家市場監督管理総局は『販売促進行為を規範化する暫定規定』(以下『暫定規定』という)を公布し、経営者が販売促進を展開する際に「先に値上げし、また割引する」という現象に対して、割引、値引きの基準などを明確にしました。『暫定規定』は 2020 年12 月 1 日から正式に実施されます。

中国人弁護士による解説

2.1 『暫定規定』は経営者の販促行為を規範化:経営者が販促活動を展開する際に、販促規則、販促期限及び消費者に不利な制限条件などを公示し、消費者の知る権利と選択権を十分に保障し、不正に消費者を刺激し理性的ではない消費に誘導してはならないとしています。

2.2 『暫定規定』では、、懸賞景品付販売の規定を細分化しています。懸賞景品付販売の分類方法を抽選式と付録つきの懸賞付販売に明確化しています。不当な懸賞付

販売行為の認定基準を細分化し、抽選式の懸賞景品付販売の最高賞金額を従来の五千元から五万元に引き上げ、経営者の懸賞景品付販売の過程における義務に関して規定をしています。懸賞付販売情報の条項が新たに追加され、経営者は懸賞景品付販売に関するファイルを作成し、二年間保管することが要求されています。

2.3 『暫定規定』では、販売販促の基準価格の規則を明確にしています。販売促進の値下げ価格は、基準価格つまり元々の市場価格を明確にする必要があります。販売促進基準価格が明記されていない、または表示されていない場合、その割引/値引きは同一の経営者が同一の経営場所内で今回の販売促進活動の 7 日間前に最低の成約価格を基準としなければなりません。7 日間に取引がない場合、割引/値引きは今回の販売促進活動の前の最後の取引 価格を基準としなければなりません。


3.2020 年 11 月 24 日、民政部は《『中華人民共和国国民法典』における婚姻登記に関する規定の徹底に関する通知」(以下、「通知」という)を発表し、婚姻登録に関する手続き等を調整しました。

中国人弁護士による解説

『通知』に基づき、2021 年 1 月 1 日以降の離婚協議の手続きは以下となります:

3.1 申請:夫婦双方が自由意志により離婚した場合、書面による離婚協議を締結し、管轄の婚姻登記機関に双方で赴き申請を行い、関連証明書と証明資料を提供しなければなりません。

3.2 受理:婚姻登記員が提出書類に対して一次審査

を行います。一次審査で間違いないがないことが確認された後、提出書類が受理されます。

3.3 クーリングオフ期間:婚姻登記機関が離婚届を受領し、当事者に「離婚登記申請受理領収書」を発行した日から 30 日以内がクーリングオフ期間とされます。「中華人民共和国国民法典」の規定により、クーリングオフの期間内に、いずれかの当事者が離婚を希望しない場合、離婚届を撤回することが可能となりました。

3.4 審査:クーリングオフ後の 30 日以内に、双方の当事者は離婚協議書、結婚証、有効な身分証明書、個人で最近撮影した半身無帽写真などの資料を持って、共同で婚姻登録機関に離婚証を申請します。「中華人民共和国国民法典」の規定により、30 日以内に申請しなかった場合、離婚登記申請は取り下げられたものと見なされます。

3.5 登記(証明書の発行)。

離婚のクーリングオフ期間は夫婦双方の自由意志により協議がされる離婚の場合にのみ適用され、訴訟による離婚の場合は離婚のクーリングオフ制度は適用されません。婚姻中に家庭内暴力がある場合等の理由で、離婚のクーリ ングオフが適応されることを懸念する場合、当事者は訴訟による離婚を選択することにより離婚のクーリングオフの規定が適用されなくなるよう選択をすることが可能です。


4.2020 年 12 月 14 日に開催された国務院常務会議は、2021 年 1 月 1 日から全国で動産と権利担保の統一登録を実施することを決定しました。

中国人弁護士による解説

 2021 年 1 月 1 日より、動産と権利担保が全国で統一登録されるようになります。市場監督管理総局が受け持っていた生産設備、原材料、半製品、商品抵当登録と人民銀行が受け持っていた売掛金の質権設定登記、及び預金の単体担保、融資リース、保険などの登録は人民銀行が一括して受け持ち、インターネットベースの一日 24 時間、週7 日間のサービスが提供されことになります。

 会議では、これまで動産と権利担保の登録をしていた場合、改めて登録する必要がなく、関連部門は適切に保存された情報のデータの引渡しなどの業務を行うことを明らかにしました。新たに登録する場合は、当事者が動産融資統一登記公示システムを登録して自主的に処理し、登録内容の真実性、完全性及び合法性に対して責任を負うとされます。登録機関は登録内容に関して実質的な審査を行いません。


二、企業によくある法的問題とリスク


(一)企業による外国人の雇用及び外国人の就業に関連する法律的問題

1.企業は外国人の社会保険を納めるべきか

 『我が国の国内で就業する外国人の社会保険参加活動を適切に行う関係問題に関する通知』の規定に基づき、企業は雇用する外国人のために就業開始の月から保険料を支払わなければなりません。しかし、当該外国人の国籍の所在国と中国が社会保険の二国間または多国間協定を締結している場合、当該外国人は法に基づき中国国内の就業証明を取得して 3 ヶ月以内に協定国が発行した保険加入証明書を提出した場合、協定の規定する保険の種類について期限内の保険納付義務を免除するとしています。現在、中国は日本、韓国、ドイツ、フランス、カナダなど11 の国と社会保障二国間協議を締結しています。これらの二国間協議には社会保険免除項目に関する約定があります。そのため、企業は外国人を採用する際、中国と協定が締結されているかの確認が必要です。

 当チームからの注意点の提示:法律に基づき中国国内で就業証明を取得してから 3 ヶ月後に協定国で発行された保険加入証明書を提供できない場合、規定に従い社会保険料を納め、相応の滞納金を支払わなければなりません。協定で規定されている以外の保険の種類種及び協定に規定された保険の種類が規定期限を超えた場合、規定に従い社会保険料を納付しなければなりません。当弁護士チームは企業が外国人と労働契約を締結する際、協定国の保険加入証明書の提供の責任と期限を明確にすることをお勧めいたします。

2.外国籍の従業員が就業証明の手続きを行っていない場合、企業と労働関係は成立するか

 広東省高級人民法院、広東省労働紛争仲裁委員の指導意見によると、「外国人が法により『外国人就業証明』の手続きを行っていない場合、無効な労働契約と認定さる。外国人が既に労働を提供している場合、雇用者は契約書の約定を参照して、労働報酬を支払わなければならない。」としています。

 外国籍の従業員が就業証明の手続きを行っておらず会社に労働を提供するということは、外国籍の従業員が不法就業を行っていることを意味し、双方が労働関係を成立していないため中国労働法律法規の保護を受けることができません。この場合、外国籍の従業員と雇用者の双方の間で紛争が起着た場合、労働仲裁の受理範囲には属しませんが外国籍の従業員が既に労働を提供している場合は、企業は契約の約定に従い労働報酬を支払わなければなりません。

 また、中国の『労働契約法』第86 条の規定により、労働契約が無効と認定され相手方に損害を与えた場合、過失がある当事者は賠償責任を負わなければなりません。そのため、企業側の原因で外国籍の従業員の就業証明の手続きを行っておらず労働契約が無効と認定された場合、企業は外国籍の従業員に賠償しなければなりません。

3. 台湾香港とマカオの従業員が中国大陸で就職する場合、就業証明の手続きが必要か

 『国務院の行政許可の取消等に関する決定』(国発〔2018〕28 日)の規定に基づき、2018 年 7 月 28 日より、香港・マカオ台湾人の内陸(大陸)での就職の際の「台湾香港・マカオ人就業証明」の手続きが不要となっています。台湾香港とマカオの従業員は香港とマカオの住民居住証、香港マカオ住民通行証、台湾居民大陸通行証等の有効な身分証明書を使用し人力資源社会保障の各業務の手続きを行うことができます。

4.以前の勤務先の企業が退職証明書の提供を拒否し、外国人従業員が再就職できなくなった場合、外国人従業員はどう処理するべきか

 外国籍の従業員は以前の勤務先の所在地の労働監査大隊に訴える権利があります。労働監察大隊は以前の勤務先に適時に退職証明書を発行するよう命じます。

外国籍の従業員が中国で就業する際、行政審査制度が実行されるため、外国籍の従業員が中国で就業資格を取得する際も就職先を変更する際も事前に雇用主の所在地の労働行政部門の審査が必要となります。中国を離れる場合は、退職時に就業証を返却し、就業証の取り消しを行い、雇用主は直ちに労働部門に報告します。関連部門が手続きを終えた後、就業証の取り消し証明を当該外国人従業員に与えなければなりません。

 以前の勤務先が外国籍の従業員に退職証明書を発行せず、就業証の変更、就業継続ができない場合、当該外国籍の従業員は以前の勤務先の所在地の労働監査大隊に対して訴え、労働監察大隊により以前の勤務先に適時に退職証明書を発行するよう命じます。

5.外国籍従業員との間で労働紛争が発生した場合の管轄及び法律の適用に関する問題

 法に基づき就業証明を取得した外国人従業員と中国国内の雇用者との間には正式な労働関係があり、中国の労働に関する法律・法規の保護を受けます。法律の規定により、労働紛争事件は一般的に雇用者の登記がされている場所、または労働契約が実際に履行される場所の仲裁または裁判所によって管轄されます。

当チームからの注意点の提示:労働契約の中で管轄と法律の適用については自ら約定することはできません。法律の規定に従い約定されなければなりません。


三、成功事例の共有

 当チームは、以前日本国籍の従業員(以下「依頼者」という)と依頼者の以前の勤め先の企業(以下「当該企業」という)との間の労働争議案件を代理し、案件は労働仲裁、一審及び二審の段階を経て最終的に依頼者は 40 万元余りの賠償金を獲得することに成功しました。

 依頼人は当該企業で長年に及び勤務しましたが、当該企業は依頼人との「協力関係」を解除する通知をしました。当チームは労働仲裁を提起し当該企業に労働契約の違法解除の賠償金 40 万元余りと未払い分の給与 2.4 万元を支払うよう要求しました。当該企業は、依頼人と会社との関係は取引がある海外主体の株主であると主張していました。また依頼人と当該企業の法定代表人とはかつて婚姻関係がありました。当該企業は、多くの証拠資料を提出し依頼人と当該企業の関係は協力関係であり、労働関係ではないと主張しました。本件の争議の焦点は、依頼人と当該企業の間に労働関係が成立するかどうかでした。

 当弁護士チームは既存資料を精査した上で、徐々に証拠の連鎖を整え、双方の間で労働関係が成立している事を十分に証明するために、労働契約、在職証明書、就業証明書、銀行明細などを提出しました。最終的に労働仲裁段階において、当方の請求は完全に支持されました。その後、この案件は一審、二審の段階を経て、平均賃金計算方式の違いにより賠償金の金額が 39.7 万元に引き下げられた以外、一審、二審の裁判所はいずれも当方の請求を支持しました。

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