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【車衛東弁護士チームニュースレター】2021年12月分(第十八号)

更新日:2022年2月10日

中国の最新法令情報や車衛東弁護士チームが担当した案件を通して企業のコンプライアンス管理等について解説するニュースレターの日本語版をお届けいたします。


一、最新法律情報


1.12月1日午前、広東省第十三期人民代表大会常務委員会第十三回会議で『広東省人口及び計画出産条例』(以下『条例』)の修正に関する決定が通過し、父母の育児休暇、一人っ子の介護休暇の新たな追加、普遍的な恩恵としての保育サービスシステムの確立等の内容が明確にされ、公布決定日から施行されます。

中国人弁護士による解説

(一)1組の夫婦につき3人の子どもを出産することができ、再婚した夫婦は再婚後に3人の子どもを出産することができます

条例は「一組の夫婦につき2人の子どもを出産することを奨励する。法律、法規の規定に適合せず多く子どもを出産した場合、超生(計画出産政策に違反した出産)に該当する」という内容を「適齢期での結婚と出産、子どもを少なく産み、恵まれた条件で育てることを奨励する。一組の夫婦につき3人の子どもを出産することができる。再婚した夫婦は再婚後に3人の子どもを出産することができる」という内容に修正しました。

一組の夫婦が3人の子どもを出産できることを規定し、再婚した夫婦が3人の子どもを出産できることを明確にし、再婚した夫婦について以前出産した子どもの人数を合算することをやめました。

(二)社会扶養費(計画出産政策に違反した場合の罰金)を支払う必要がなくなりました

条例は社会扶養費の徴収、結婚・出産証明書、違反した場合の責任と強制執行等の内容を含む、3人の子どもを持つことを認める政策と相容れない制約を削除しました。

(三)育児休暇、介護休暇が追加されました

条例によれば、女性側は国家が規定する98日間の産休を基礎として、更に80日間の奨励休暇、合計178日間の休暇を受けることができ、男性側は15日の出産付添休暇を受けることができます。

育児休暇が追加され、子どもが満3歳になるまで、父母が毎年各10日間の育児休暇を受けることができると規定されました。

 一人っ子が父母を世話する負担を軽減させるため、条例は、父母の年齢が満60歳以上の一人っ子には、毎年5日間の介護休暇を持てること、父母が病気により入院して治療している場合、その子どもには毎年累計で15日間を超えない介護休暇を持てることを明確にしました。


二、2021年11月26日、広東省人民政府は『広東省人民政府による我が省の最低賃金基準の調整に関する通知』を公布し、2021年12月1日から、広東省のフルタイム雇用労働者の1か月あたりの最低賃金基準と非フルタイム雇用労働者の1時間あたりの最低賃金基準について調整を行います。

(一)広東省の最低賃金基準は4つに分類されます

1.1一類

適用地区:広州市と深セン市

1か月あたりの最低賃金基準:広州市は2300元/月、深セン市は2360元/月

非フルタイムの場合の1時間あたりの最低賃金基準:22.2元/時間

1.2二類

適用地区:珠海、佛山、東莞、中山

1か月あたりの最低賃金基準:1900元/月

非フルタイムの場合の1時間あたりの最低賃金基準:18.1元/時間

1.3三類

適用地区:汕頭、惠州、江門、湛江、肇慶

1か月あたりの最低賃金基準:1720元/月

非フルタイムの場合の1時間あたりの最低賃金基準:17.0元/時間

1.4四類

適用地区:韶関、河源、梅州、汕尾、陽江、茂名、清遠、潮州、掲陽、雲浮

1か月あたりの最低賃金基準:1620元/月

非フルタイムの場合の1時間あたりの最低賃金基準:16.1元/時間

(二)中国人弁護士による解説

2.1最低賃金基準の概念

 最低賃金基準とは、労働者が法定労働時間または締結した労働契約の約定する労働時間内に、通常どおりの労働を提供した前提の下、雇用者が法に基づき支払わなければならない最低労働報酬を指します。ここでいう通常どおりの労働とは、労働者が法に基づき締結した労働契約の約定に応じ、法定労働時間または労働契約で約定した労働契約時間内に従事する労働を指します。労働者は法に基づき年次有給休暇、帰省休暇、慶弔休暇、産休、避妊手術休暇等の国の規定する休暇期間を享受し、また、法定労働時間内に法に基づき社会活動に参加した時間は、通常どおりの労働を提供したものと見なされます。

2.2最低賃金基準の形式

 最低賃金基準には1か月あたりの最低賃金基準と1時間あたりの最低賃金基準の2種類の形式が含まれます。1か月あたりの最低賃金基準はフルタイム雇用労働者に適用され、1時間あたりの最低賃金基準は非フルタイム雇用労働者に適用されます。

2.3能率給または歩合給等の給与形式を取る場合、どのようにして最低賃金基準を適用するか?

能率給または歩合給等の給与形式を取る雇用者は、科学的且つ合理的に確定した労働ノルマをベースとし、労働者に支払う給与が対応する最低賃金基準を下回らないようにしなければいけません。

2.4最低賃金基準に以下の項目は含まれません

2.4.1延長された労働時間の給与。

2.4.2中番、夜勤、高温、高所、低温、地下、有毒有害等の特殊な作業環境、条件下の手当。

2.4.3法律、法規と国が規定する労働者の福利厚生等。

2.5雇用者が最低賃金基準の規定に違反した場合の法的責任

 『広東省給与支払条例』の規定によれば、雇用者が労働者に支払う給与が最低賃金基準を下回った場合、人力資源社会保障部門により期限内に労働者に支払った給与が現地の最低賃金基準を下回った差額分を支払うよう命じられます。期限を過ぎても支払わない場合、雇用者は支払うべき金額の50%以上2倍以下の基準の賠償金を労働者に追加で支払わなければいけません。

2.6労働者が雇用者の損害を賠償した後の給与は最低賃金基準を下回ってはいけません

 『給与支払に関する暫定施行規定』第16条の規定によれば、労働者本人の原因により雇用者に経済的損害を生じさせた場合、雇用者は労働契約の約定に応じて経済的損害を賠償するよう求めることができます。経済的な損害の賠償金は、労働者本人の給与から差し引くことができます。但し、毎月差し引く部分は労働者の当月の給与の20%を超えてはいけません。もし差し引いた後に残る給与部分が現地の1か月あたりの最低賃金基準を下回る場合は、最低賃金基準に応じて支払うよう調整しなければいけません。


三、11月24日、市場監督管理総局は『企業規格化促進弁法(改正意見募集稿)』(以下『弁法』)を公布し、2021年12月23日まで公開で意見を募集します。

 弁法は総則、規格制定、自己宣言公開、促進とサービス、監督管理、附則を含み、合計6章35条あり、主な内容は以下のとおりです。

(一)規格に沿った生産

 企業は規格に沿った製品の生産とサービスの提供をしなければいけません。強制規格は必ず守らなければならず、任意規格についても企業がこれを守ることが奨励されます。関連する基準がない場合は、企業が自ら社内規格を制定しなければいけません。

(二)企業が制定する製品またはサービスの規格はそのテスト方法や検査方法を明確にしなければいけません

 テスト方法または検査方法には対応する国家規格、業界規格、地方規格または国際標準規格を導入しなければならず、対応する国家規格、業界規格、地方規格または国際標準規格がない場合、企業は自らテスト方法または検査方法を制定することができます。企業が自ら制定するテスト方法または検査方法は、科学的且つ合理的、正確で確実なものでなければいけません。

(三)自己宣言公開

 企業は提供する製品またはサービスに適用している強制規格、任意規格、団体規格または社内規格の番号と名称を自己宣言公開しなければいけません。企業が自ら制定した、または共同で制定した社内規格を適用する場合、製品、サービスの機能指標と製品の性能指標を公開しなければいけません。業務上の秘密に関わらない状況において、機能指標と性能指標に関連するテスト方法または検査方法も公開しなければいけません。

企業が公開する機能指標と性能指標の項目が任意規格よりも少ない、または技術的要求事項が任意規格より低い場合、自己宣言公開時にこれを明示しなければいけません。


四、2021年11月23日、税関総署は『中華人民共和国税関承認輸出業者管理弁法』(以下『弁法』)を公布し、当該の弁法は2022年1月1日から施行されます。

中国人弁護士による解説

(一)この弁法が公布された目的は、中華人民共和国が締結または参加している特恵貿易協定の項目内の承認輸出業者管理制度を効果的に実施し、輸出品の原産地管理を規格化し、対外貿易を促進することです。

(二)承認輸出業者が満たすべき条件:

1.税関の高級認証企業であること。2.関連する特恵貿易協定の項目内の原産地規則を把握していること。3.完備された原産資格の文書管理制度を確立すること。

(三)企業が承認輸出業者になるための申請に必要な書面による資料について

3.1受理官庁:住所地の所轄の税関(以下「所轄の税関」)。

3.2書面による申請の際は以下の内容を含んでいなければいけません。

3.2.1企業の中国語・英語の名称、中国語・英語の住所、統一社会信用コード、税関の信用等級、企業タイプ、連絡先担当者の情報等の基本的情報。

3.2.2企業の主な輸出品の中国語・英語の名称、規格・型番、HSコード、適用される特恵貿易協定及び具体的な原産地基準、輸出品が使用する全ての材料及び部品の組合状況等の情報。

3.2.3関連する特恵貿易協定の項目内の原産地規則を把握していることの承諾声明書。

3.2.4完備された原産資格の文書管理制度を確立していることの承諾声明書。

3.2.5原産地声明に押印する予定の印鑑の印影。

注意:申請資料が業務上の秘密に関わる場合、申請時に書面の形式で所轄の税関に秘密保持を求め、具体的に秘密保持が必要な内容を明記する必要があります。税関は国の関連規定に基づき守秘義務を負います。


五、2021年11月19日、税関総署は『中華人民共和国税関通関登録業者登録管理規定』(以下『規定』)を公布し、当該の規定は2022年1月1日から施行されます。

中国人弁護士による解説

 以下の事業者は国の関連規定に基づき非貿易的輸出入活動に従事する場合、臨時登録の手続きをしなければいけません。

1.1国外企業、報道・経済貿易機関、文化団体等の法に基づき中国国内で設立された駐在代表機関。

1.2少量の商品見本を輸出入する事業者。

1.3国家機関、学校、科学技術研究機関、赤十字、財団等の組織機構。

1.4寄付金、贈答品、国際援助または対外的に実施される寄付金、国際援助を受ける事業者。

1.5その他非貿易的輸出入活動に従事する事業者。

登録手続きをする場合、所在地の税関に『通関事業者登録情報表』を提出し、主体の資格証明資料、非貿易的輸出入活動の証明資料を添付する必要があります。


六、2021年11月15日、国家衛生健康委員会等15部門は共同で『母乳育児促進行動計画(2021-2025年)』(以下『行動計画』)を発行し、その目的は出生政策最適化の実施を保障し、母子の権益を保護し、母乳による育児を促進することです。

中国人弁護士による解説

『行動計画』は以下の内容を明確に打ち出しています。

(一)授乳期の女性従業員の権益の保護。雇用者は女性従業員の労働保護の関連規定を適切に実施し、女性従業員が産休、出産奨励休暇を受けられることを確実に保証し、授乳期の女性従業員に対し合理的に授乳期間を割り当てなければいけません。条件を備えている場所での試験的な父母への育児休暇の実施を奨励し、父母の育児休暇の待遇を合理的に確定し、休暇期間の雇用コストの分担システムを整備します。雇用者は授乳期の女性従業員に対し労働時間の延長や夜勤労働の割り当てをしてはいけません。満1歳未満の乳児に授乳している女性従業員について、雇用者は毎日の労働時間内に1時間の授乳時間を設けなければいけません。女性従業員が多胎児を出産する場合、授乳する乳児1人につき1時間の授乳時間を追加し、授乳時間は通常どおりの労働を提供したものと見なします。雇用者は女性従業員の授乳を理由として給与や福利厚生の引き下げ、解雇や労働(雇用)契約の解除をしてはいけません。雇用者は作業場の安全・衛生を確実に保証し、有害・有毒及び放射能汚染等の授乳期に従事することがタブーである労働に授乳期の女性従業員が従事することを避けなければいけません。

(二)柔軟な労働時間と働き方の奨励。雇用者は生産と業務の実情を踏まえ、授乳期の女性従業員に便宜を図るための多様な措置を取らなければいけません。産休を終えた女性従業員について、本人の意思で早期復帰が申請された場合、雇用者と従業員の話し合いにより、半日勤務や隔日勤務等の多様で柔軟な方法により取得すべき未取得の出産奨励休暇を累計して使用することができます。授乳期の女性従業員の授乳時間は雇用者と従業員による協議の上、毎日の労働時間の適宜短縮、労働時間内の分割した利用、フレキシブルな出退勤等の柔軟な方法で調整することができます。条件に該当する雇用者は実際の職務を踏まえ、条件に適合する授乳期の女性従業員について在宅勤務等のリモートワーク方式により授乳に関する困難を解決することができます。


七、2021年11月22日、更なるビジネス環境の最適化、商業主体の商標権、名称権の保護のため、深セン市市場監督管理局は『深セン市市場監督管理局による商業主体名称の馳名(著名)商標と著名屋号の登録保護弁法』(以下『弁法』)を発行しました。

中国人弁護士による解説

(一)商事登記機関が保護名簿を公布した後、商業主体が保護名簿に記載されているべきであるにも関わらず記載されていないと考える場合、商事登記機関に保護名簿への記載を提案することができます。保護名簿への記載を提案した後、商事登記機関に提案書及び馳名商標の認定文書または商業主体の名称・屋号の知名度に関連する資料を提出しなければいけません。

(二)弁法にいう馳名商標とは、中国において関連する公衆が熟知しており、且つ既に市場監督管理部門または人民法院が法により馳名商標に認定したものを指します。

(三)弁法にいう著名屋号とは、中国において比較的高い商業的信用・名誉と影響力を持ち、関連する公衆に熟知・認知されており、他の商業主体の代表的な言葉の屋号とは顕著に区別されるものを指し、以下を含みます。1.商務部に「中華老字号」として認定された企業名称・屋号。2.『フォーチュン』の「世界トップ500」に入った企業名称・屋号。3.中華全国工商業連合会の「中国民営企業トップ500」に入った企業名称・屋号。4.中央国有企業の屋号及び社会の公衆が熟知している略称。5.市が所有する一級国有企業の屋号及び社会の公衆に熟知されている略称。6.国内の証券取引所で上場している企業の名称・屋号。7.科学技術部により認定された「中国ユニコーン企業」の名称・屋号。8.商事登記機関が比較的高い知名度を有しており、保護する必要があると考える商業主体の名称・屋号。

(四)全ての馳名商標、著名屋号が直接保護名簿に記載されるわけではありません。保護名簿は確立される際にその屋号と他の企業の屋号の区別が顕著であるかどうか、及び公衆から熟知されている程度を考慮しなければいけません。


八、2021年11月15日、国家知的財産権は『専利権(特許権、実用新案権、意匠権)質権登記弁法』(以下『弁法』)を公布し、公布日から施行します。

中国人弁護士による解説

(一)2010年8月26日に公布された『専利権質権登記弁法』と比較して、改正後の弁法は第六、第七、第十、第十一、第十三、第十四、第十六、第十九、第二十条等の条項に比較的重要で実質的な修正があります。

(二)弁法は、当事者が誓約する方式で専利権質権登記の関連手続きを行うことを選択でき、当事者が関連する誓約書を提出する場合、身分証明、変更証明、登記抹消証明等の証明資料を提出する必要はありません。弁法は、質権登記を求められた実用新案が既に同日に特許権を出願した発明・創造を有している場合、当事者が告知された後も依然としてリスクを引き受け、手続きを継続することを望めば、登記手続きを許可することを打ち出しています。


九、 2021年10月21日、広東省人力資源社会保障庁は『広東省人力資源社会保障行政紛争ガイドライン』(以下『ガイドライン』)を発行し、2021年11月1日から施行し、有効期間は5年です。

中国人弁護士による解説

ガイドラインは企業の従業員の養老保険案件、労災保険案件、労働保障監察案件の3つの部分の内容を含んでいます。

従業員の養老保険案件は主に以下を含みます:

1.見なし納付年数の認定

 国有や県以上の組織が所有する単位で募集・採用された臨時雇用労働者が、当該の企業で企業労働契約に基づく労働者になった場合、現地で『広東省臨時労働者養老保険弁法』が実施される前の臨時労働者の勤続年数は、労社庁簡[2002]323号文書の規定に基づき、見なし納付年数を認定します。

2.養老保険関係の移管

省を跨いで流動する労働者に他の省での見なし納付年数があるが、養老保険関係の省を跨いだ移管・移行手続きを行っていない場合、その見なし納付年数の認定について、以下の状況に分けて処理します。

(1)他省の企業の従業員が転出して自己負担制度を実施する前、組織・労働・人事部門の承認を得て広東省の企業に転入して労働し、広東省の企業従業員基本養老保険に加入する場合、国の規定に適合して計算した連続勤続年数を見なし納付年数とします。広東省において83号文書が実施される前に転入した場合、連続勤続年数は現地で83号文書が実施される前月まで、広東省で83号文書が実施された後転入した場合、見なし納付年数は異動した月までと認定し、当月既に実際に納付した場合は重複して見なし納付年数と認定することはありません。

(2)他省の企業の従業員が他省で自己負担制度を実施する前に業務に参加し、自己負担制度を実施した後に広東省に移動して就業し、国の規定に基づき広東省で給付を受けることを確定した場合、広東省の担当機関はその従業員が他省で自己負担制度を実施する前に国や広東省の見なし納付年数の規定を満たしていた連続勤続年数について、法に基づき見なし納付年数の審査を行い、結論を出します。

3.特殊な職種

従業員が過去に異なる特殊な職種に従事していた場合、複数の特殊な業種の年数を合算、累計して計算できるかどうかという問題:過去に複数の特殊な業種・職位に従事し働いていた従業員は、従事していたのと同じタイプの職種の勤続年数を早期退職の手続きに必要な特殊な業種での勤続年数として累計でき、異なるタイプの特殊な業種での勤続年数は累計できません。

4.養老保険待遇の査定

保険加入者が死亡し、複数の地で養老保険関係が成立しており、且つ移管・集計されていない場合、その遺族が複数の地で死亡給付を受けることができるかどうか:死亡した保険加入者が複数の地で養老保険関係を成立させており、移管・集計していない場合、その遺族はそのうち1つの社会保険担当機関に対してのみ死亡給付受け取りの手続きができます。

労災保険案件は主に以下を含みます:

1.労災認定申請

労災認定案件において当事者双方の間に労働争議が存在する場合、労災認定部門は従業員が労働争議に関する仲裁を必ず申し立てるように要求したり、法院が労働関係の文書を確認した場合のみ受理したりしてはいけません。労災認定の決定を下す前、労働者側が既に労働関係の確認のために労働仲裁を申し立てたり民事訴訟を提起したりした場合、労災認定部門は案件の審理を中止し、法に基づき当事者に送達します。

関連する根拠:

①『労災保険行政案件の審理に係る若干の問題に関する規定』(法釈[2014]9号)第二条 人民法院が労災認定の行政案件を受理した後、原告または第三者が行政訴訟を申し立てる前に既に労働関係が存在するかどうかを確認するために労働仲裁の申し立て、または民事訴訟の提起をしていることに気づいた場合、行政案件の審理を中止しなければならない。

②『最高人民法院行政審判廷による労働行政部門の労災認定における労働関係を確認する権利の有無に関する回答』(〔2009〕行他字第 12 号)

湖北省高級人民法院:貴院の『最高人民法院行政審判廷による労働行政部門の労災認定における労働関係を確認する権利の有無に関する質問状』を受領した。研究の結果、以下のとおり回答する。『労働法』第九条と『労災保険条例』第五条、第十八条の規定に基づき、労働行政部門は労災認定をする過程において、負傷した従業員と企業の間に労働関係が存在するかどうかを認定する職権を有する。

2.労災認定

「通勤中の事故でケガをした場合」

2.1通勤経路

(1)勤務地と居住地、常居所、勤務先の寮(父母、配偶者、子どもの居住地を含む)の間の経路は通勤途中と認定することができます。

(2)退勤の目的地が居住地、常居所、勤務先の寮(父母、配偶者、子どもの居住地を含む)ではない場合、第一目的地を原則として認定しますが、第一目的地までの距離が明らかに合理的な範囲を超えている場合は除きます。

(3)日常生活で必要な合理的な回り道、例えば食材の購入、子どもの送り迎え等は支持されますが、同時に合理的な時間の条件を満たしていなければならず、そうでない場合は合理的でない回り道になり、第一目的地の原則を適用しなければいけません。このほか、「日常生活で必要」というのは社会通念に一致しているかどうか、よく見られる行為であるかどうか等の要素を考慮しなければいけません。


二、労働争議の事例共有及び企業のコンプライアンス管理

 鄭氏は2010年9月に深センの某科学技術会社に入社して人事シニアマネージャーとして勤務し、2020年11月、会社との協議を経て合意の上で労働契約を解除して未取得の年次休暇手当を清算し、離職給与明細表によれば、未取得の年次休暇手当は合計で20万元近くとして清算されていました。鄭氏が以前制定に関与した『就業規則』では「契約期間内、従業員が当年度取得しきれなかった年次有給休暇は翌年度に繰り越すことができ、翌契約年度内に取得しきらなければならない。従業員が自身の都合で取得しなかった年次有給休暇は自動的に放棄したものと見なす」と規定されているため、会社はその後、離職時の給与を計算する際、誤って鄭氏が2019年までに取得していなかった年次休暇の累積部分を含めて清算してしまい、未取得の年次休暇手当を10万元多く支払ってしまった、と主張しました。その理由として、清算した金額の一部は2019年以前の未取得の年次有給休暇の手当ですが、これは会社の規定に基づき既に自動的に放棄したものと見なされており、清算時の金額に計上するべきではなかったため、鄭氏はこれを返還しなければいけない、としました。鄭氏は清算済みの未取得の年次休暇手当を受け取ったことは認めましたが、年次休暇については放棄しておらず、会社は支払うべき金額を支払ったものと考えており、返還には同意しませんでした。

 会社は仲裁委員会に仲裁を申し立て、鄭氏の離職時に多く清算してしまった未取得の年次休暇手当10万元を返還するよう求め、鄭氏はこれにどう対応すべきかわからなかったため、当弁護士チームに本案の処理を委託しました。当弁護士チームは委託を受けた後、本案の資料を調べ、鄭氏から関連する状況について確認した後、鄭氏が年次休暇を取得しないことに同意した場合のみ会社が年次休暇手当を支払わない、というのが前提条件であり、自動的に放棄したと見なす行為は無効であるため、鄭氏は2019年以前の未取得分の年次休暇手当を返還する必要はない、と考えました。本案は仲裁、一審、二審を経て、全て鄭氏が未取得の年次休暇手当を返還する必要はないと考えられ、会社の主張は却下されました。

【事例内の経験の総括】

 従業員の有給年次休暇は法的権利であり、『従業員有給年次休暇条例』は年次休暇の取得について1年度内に集中させても、分けても構わず、一般的には年度を跨がずに取得するもの、と規定しています。勤務先が生産、業務の特徴により、確かに年度を跨いで年次休暇を取得させなければならない場合、1年度を跨いで調整することができます。勤務先が確かに業務上の必要性から従業員に年次休暇を取得させることができない場合、従業員本人の同意を経て、年次休暇を取得させないこともできます。従業員が取得すべきでありながら取得していない年次休暇の日数について、勤務先は当該の従業員の給与日額収入の300%の年次休暇手当を支払わなければいけません。このことからわかるように、年次休暇は1年度を超えて雇用者が休暇を取得させる義務を履行することができるという緩和策であり、労働者が年次休暇を取得する権利への制限ではありません。

 本案において、『就業規則』で「年次休暇は翌契約年度内に取得しきらなければならない。従業員が自身の都合で取得しなかった年次有給休暇は自動的に放棄したものと見なす」と規定し、鄭氏も人事シニアマネージャーとして『就業規則』の制定と実施に関与し、『就業規則』に署名し、『就業規則』の前述の規定も承知していますが、有給年次休暇は法的権利であり、鄭氏が『従業員有給年次休暇条例』第四条の規定する当年の年次休暇を受けない状況に該当した場合を除いては、鄭氏が年次休暇を取得しないことに同意した場合のみ会社が未取得の年次休暇手当を支払わない、というのが前提条件です。鄭氏は自分が年次休暇を放棄したことはないと考えており、会社も過去に鄭氏に対して休暇を割り当て、それを鄭氏が拒否したという旨を立証できなかったため、会社は依然として鄭氏に未取得の年次休暇手当を支払わなければならず、鄭氏に2019年以前の未取得の年次休暇手当の返還を要求する権利はありません。

【企業のコンプライアンス管理に関するご提案】

 当弁護士チームは雇用者に対し年次休暇の面で以下の事柄について注意喚起いたします。

1.年次休暇制度とその運用手順を確立し、年次休暇の手続きを厳格に行い、対応する証拠を残すよう注意します。

2.自身の状況に基づき、従業員本人の意向を考慮しながら、統一的に従業員の休暇を調整し、一般的には年度を跨いで休暇を取らないようにします。確かに年度を跨いだ休暇が必要な場合、必ず従業員本人の同意を得なければいけません。

3.年次休暇をその他の休暇期間と代替することはできません。例えば、国の法定祝日、休日、帰省休暇、結婚休暇、忌引休暇、産休、労災休暇(有給の休業期間)、法律の規定するその他の休暇期間等は、年次休暇と相殺したり代替としたりすることはできません。

4.従業員が以下の状況に該当する場合、当年の年次休暇は受けられません。

(1)法に基づき冬休み・夏休みを取得し、その休暇日数が年次休暇の日数よりも多い場合。

(2)私用による休暇を累計20日以上取得しており、且つ勤務先が規定に基づき給与を差し引いていない場合。

(3)累計勤続年数満1年、10年未満の従業員で、病気休暇を累計2か月以上取得している場合。

(4)累計勤続年数満10年、20年未満の従業員で、病気休暇を累計3か月以上取得している場合。

(5)累計勤続年数満20年以上の従業員で、病気休暇を累計4か月以上取得している場合。

5.雇用者と従業員の間に休暇についての紛争が生じた場合、これについて十分且つ遅滞なく立証し、また、提出する証拠の連続性、統一性に注意しなければならず、証拠が互いに矛盾していてはいけません。














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