中国の最新法令情報、新型コロナウイルス流行の影響下における訪中ビザ関連の政策、車衛東弁護士チームが担当した案件を例として企業のコンプライアンス管理等について解説するニュースレターの日本語版をお届けいたします。
一、最新法律情報
1.2021年4月9日、財政部、税務総局は公告2021年第12号、国家税務総局は公告2021年第8号を同時に公布し、零細企業と個人事業主への所得税の優遇政策を明確にしました。
中国人弁護士による解説
2つの公告の主な優遇政策は以下のとおりです。
一、零細企業の1年の課税所得額が100万元を超えない部分に対しては、課税所得額が12.5%減額され、20%の税率で法人所得税を納付します。個人事業主の課税所得額が100万円を超えない部分に対しては、現行の優遇政策を踏まえ、徴収される個人所得税が半額になります。実施期間は2021年1月1日から2022年12月31日までです。
二、2021年4月1日から個人事業主、個人独資企業、合名会社と個人に対し、貨物運送業の増値税領収書を代理発行する際の個人所得税の事前徴収が廃止されます。
2.2021年4月7日、財政部、税務総局は共同で『研究開発費用の税引前の追加控除政策の更なる改善に関する公告』(以下略称『公告』といいます)を公布し、企業の研究開発への資金投入の拡大をより奨励し、技術革新を支援します。『公告』は2021年1月1日から実施されています。
中国人弁護士による解説
『公告』の主な内容は以下のとおりです。
一、『公告』内の製造業の概念と範囲。製造業の企業とは、製造業務を主力業務とし、その年に優遇を受けた主力業務の収入が収入総額に占める比率が50%以上に達している企業を指します。製造業の範囲は『国民経済業種分類』(《国民经济行业分类》(GB/T 4574-2017))に基づいて確定し、もし国の関連部門が『国民経済業種分類』を更新した場合、その規定に従います。
二、製造業の企業が研究開発活動を実施する中で実際に発生した研究開発費用が無形資産を形成せず、当期の損益に計上されない場合、規定に従い事実に基づいて控除することを基礎として、2021年1月1日から、実際に発生した額の100%を税引前に追加控除します。無形資産を形成する場合、2021年1月1日から、無形資産のコストの200%を税引前に償却します。
三、企業はその年の第3四半期(四半期ごとに前納)或いは9月(月ごとに前納)の法人所得税の前納の申告時、自らその年の上半期の研究開発費用について追加控除の優遇政策を受けるよう選択し、「自ら判別し、優遇政策を受ける申請をし、検査に備えて関連する資料を保存しておく」という手続き方法を取ることができます。
3.2020年4月8日、財政部、証券監督管理委員会は共同で『深セン証券取引所のメインボードと中小企業板合併後の旧中小企業板の上場企業の内部統制の規範システムの実施に関する通知』(以下略称『通知』といいます)を公布し、これにより資本市場において企業の内部統制の規範システムの効果的な実施を着実に推進します。
中国人弁護士による解説
『通知』の主な内容は以下のとおりです
一、旧中小企業板の上場企業は2022年1月1日から全面的に内部統制の規範システムを実施し、2022年に会社の年次報告を開示する際、同時に会社の内部統制についての評価報告書と財務報告に関する内部統制監査報告書を開示しなければいけません。
二、旧中小企業板の上場企業は内部統制システムを構築する業務を非常に重視し、全面的に企業の内部統制の規範システムの要求に基づいた業務プロセスの整理、会社が直面する各種内外のリスクの正確な識別と評価、内部統制の対応策の改善、情報システムの向上、内部の監督の強化、定期的な内部統制への自己評価の実施、内部統制制度の健全化、実施前の各準備業務の適切な遂行をしなければいけません。
三、通知が公布された日から2021年12月31日までを移行期間とします。移行期間中、旧中小企業板の上場企業は深セン証券取引所の関連規定に基づき、内部統制に関連する情報を開示しなければいけません。旧中小企業板の上場企業が自発的に事前に企業の内部統制の規範システムの開示への要求を実施することが奨励されています。
4.3月31日、深セン市の税務局等16の部門は『納税の円滑化改革と税務環境の向上の徹底した実施のための若干の措置に関する通知』(以下略称『通知』といいます)を公布し、5大分類、17項目の措置を明示しました。
中国人弁護士による解説
『通知』の重要な内容は以下のとおりです。
一、減税政策の細やかな実施。党中央、国務院の公布した各減税政策の徹底した実施、企業の安定と雇用の拡大への注目、経済的に非常に困難な層に焦点を合わせた国民生活の保護、対外貿易の活性化と安定の重視、商取引環境に関する措置の改革と向上の着実な推進、政策による配当が直接市場の主体にわたること、企業と国民を利することの確実な保証。
二、税務の執行の規範化、仕訳と精確な管理の強化。法律法規に基づいた税金の徴収の堅持、過剰な税金の徴収の断固たる防止と阻止。事中·事後の監督管理の強化、等級別·分類別管理の実施、常態化された「信用+リスク」の監督管理方式の改善、「リスクがない場合は検査をしない、審査·批准がない場合は登録しない、違法行為がない場合は領収書の使用を禁止しない」ことの遵守。生産・経営が正常に行われている企業に対して対象範囲が広く、投げ網的な業界全体へのリスク管理の押し付けと検査を行わないこと。税に関わる違法・犯罪活動への厳重な取り締まり、詐欺を取り締まる特別活動の持続的な実施。虚偽の領収書を発行する「偽企業」、税の還付金を詐取する「偽輸出」、税の優遇を不正に受ける「偽申請」に対し目を光らせ、税収と経済に関する環境の浄化に全力を挙げること。
三、納税の信用管理制度の健全化と改善。法律法規に基づいた信用遵守の奨励と信用失墜の懲戒、社会の信用システム構築の促進、銀行·金融機関の与信商品の革新の誘導、民間企業と零細企業の融資に関する難題の解決への協力。法律法規と寛容且つ慎重な監督管理の原則に基づき、納税の信用評価ランクによる動的な注意喚起と修復に関連する規定をより一層しっかりと実施し、納税者が信用を失う行為を遅滞なく自発的に是正するよう誘導し、誠実な納税意識を向上させる姿勢の固持。重大な税務関係の違法·信用失墜行為に関する案件の情報と当事者の名簿の動的な管理の強化、当事者が早期に名簿から外れて信用修復するための手段を提供し、市場主体を規範化された健全な発展に導くこと。
5.2021年4月20日、財政部、税関総署、税務総局は共同で『“十四五(第14次五か年計画)”期間の科学技術革新の支援に係る輸入税収政策に関する通知』(以下略称『通知』といいます)を公布し、科学教育による国の発展戦略、イノベーションに牽引された発展戦略を更に推し進め、技術革新を支援します。
中国人弁護士による解説
『通知』は、2021年1月1日から2025年12月31日まで、科学研究機構、技術開発機構、学校、党学校(行政学院)、図書館が国内で生産できない、または需要に見合う性能を持たない科学研究、科学技術の開発と教育用品を輸入する場合、輸入関税と輸入増値税、消費税を免除することを明確にしています。出版物を輸入する組織が、科学技術研究機関、学校、党学校(行政学院)、図書館のために輸入する科学研究、教学用図書、資料等については、輸入増値税が免除されます。
6.2021年4月16日、市場監督管理総局は『中小·零細企業の市場撤退を簡便にするための登記抹消のより一層の改善·簡易化に関する通知(意見募集稿)』(以下略称『意見募集稿』といいます)について、2021年5月16日まで社会から公開で意見を募ります。
中国人弁護士による解説
『意見募集稿』の主な内容は以下のとおりです。
一、簡易登記抹消の適用範囲の拡大。『意見募集稿』は債権·債務が発生していない、または既に債権·債務を解決した各種市場主体を簡易登記抹消が行える範囲に組み込んでいます。
二、個人事業主による簡易登記抹消の実施。個人事業主が簡易化された手順を通じて登記抹消の手続きをする場合、承諾書と税金完納証明を提出する必要はなく、公示も必要ありません。
三、簡易登記抹消に関する公示期間の短縮、簡易登記抹消の際の登記ミスを許容するシステムの構築。『意見募集稿』は登記の公示期間を45日間から20日間に短縮し、市場主体が登記を申請する際、審査の結果「経営異常企業リストに載っている」等の簡易登記抹消が適用されない状況が存在する場合、公示を撤回する必要はなく、異常が解消された後に再度申請することができます。承諾書に記入されている文章、形式が規定通りでない場合は、訂正後に受理されます。
注意が必要な点:市場主体が簡易登記抹消を申請する際、清算·返済されていない費用、従業員の給与、社会保険料、法定補償金、納付すべき税金(滞納金、罰金)等の債務·債権があってはいけません。出資者全員の承諾書は上述の状況に対する正確さについて法的責任を負います。株式会社(股份有限公司)が簡易登記抹消を申請する際、同時に株主名簿を提出しなければならず、出資者全員と株主名簿に記載されている株主は一致していなければいけません。
二、企業の残業に関するコンプライアンス管理
一、企業の残業に関するコンプライアンス管理
残業とは、延長労働時間とも呼ばれ、雇用者が一定の手順を経て、労働者に法律、法規の規定する1日の勤務時間や1週間の勤務日数の上限を超えた勤務を要求することを指します。企業は生産や経営への必要性から、多かれ少なかれ従業員に残業を割り当てており、特に製造業、IT、通信、電子、インターネット業界においては、残業が既に常態化しています。しかし、多くの企業は残業の実施についてコンプライアンス管理をしておらず、企業側の残業コストの高額化、残業時間や残業手当の問題をめぐる従業員との間のトラブルの頻発を引き起こしています。こういった状況を受けて、当弁護士チームは以下のとおりコンプライアンス管理についてご提案いたします。ご参考いただけましたら幸いです。
1.振替休日の有効利用。もし企業側に条件がある場合、特に給与の比較的高い従業員に対して、優先して休日の振り替えを選択することで残業手当の支出の代替策とすることができます。
2.祝祭日には極力従業員に残業を割り当てないこと。『中華人民共和国労働法』の関連規定によると、祝祭日の残業には振替休日制度は適用されず、更に300%の基準に応じて残業手当を支払わなければならず、残業コストが最も高くなります。もし必要性がなければ、企業は極力従業員に祝祭日の残業を割り当てるべきではありません。
3.企業の残業制度の改善。一般的に、振替休日の有効利用、祝祭日に従業員への残業の割り当てをしないことの2点について企業側に特に問題がないにも関わらず、健全な残業制度がない場合、それを原因として、残業時間の計算及び給与の問題について従業員との間に紛争が生じ、不利な立場に置かれやすくなっています。こういった状況に対し、当弁護士チームは企業が以下のとおり残業制度を改善なさるようご提案いたします。
(1)残業審査制度の確立或いは改善。企業は就業規則内で従業員の残業には必ず企業の許可或いは割り当てが必要であることを明確に規定し、同時に企業による残業の審査と批准のプロセスを設定することができます。例として、企業は就業規則内で従業員が残業するには必ず部門の責任者に申請書を提出し、残業の具体的なスケジュールを明確にした上で総経理の審査を通過してから従業員に残業の通知をしなければならず、このプロセスを経ることなく従業員が自ら実施した残業行為は残業とは認定しない、と規定することができます。当弁護士チームは、残業の審査制度を円滑に実施するため、必ず従業員にこの制度を熟知、理解させ、また就業規則に署名させて確認することをご提案いたします。
(2)企業は法に基づき、現地の最低賃金を下回らない基準で従業員の残業手当を計算することができます。企業は就業規則内で従業員の残業手当は現地の最低賃金を基準として計算することを明確に規定することができます。現在の深セン市の裁定賃金の基準は2200元/月であり、企業はこれを基にフルタイムの従業員の残業手当を計算することができます。
(3)労働契約書内の従業員の給与に関する約定事項の改善。給与の比較的高い従業員に対し、企業は従業員と労働契約を締結する際、労働契約書内で固定給制(残業手当を含む)を採用することを約定し、同時に従業員の給与明細内で給与に残業手当が含まれていることを明記することができます。
企業が上述のご提案に基づいて残業制度を改善した場合、企業の残業面に関する効果的なコンプライアンス管理の実行、企業のコスト及び従業員との間の残業に関する紛争の削減に有利になります。このほか、当職は、従業員が残業手当の支払いを求める場合、残業通知、勤怠表、引き継ぎ記録、給与明細、証人による証言等を提供し、残業の事実が存在することを立証する責任を負わなければならず、それができない場合、従業員は不利な結果を負うことになる旨を注意喚起いたします。
三、深セン市の疫病対策期間中の外国人訪中に関する最新情報
深セン市人民政府外事弁公室、中華人民共和国駐日本国大使館の発表した通知によりますと、3月15日から、疫病対策期間中に中国を訪れるビザのための招聘状の範囲が深セン市において中国の経済と人民の生活に関わる重要なプロジェクト及び活動に携わる外国人のみに変更され、また、訪中ビザのための招聘状申請の仲介·代行行為が厳しく禁じられました。車衛東弁護士チームは以下のとおり深セン市における疫病対策期間中の外国人訪中についての政策に関する情報を整理・総括いたしました。ご参考いただけましたら幸いです。
一、外国人の訪中に関する政策
『中華人民共和国外交部、国家移民管理局による三種類の有効な居留許可証を持つ外国人の入国に関する公示』及び中国の国家移民管理局からの回答によりますと、有効期間内の中国の就労(Z)ビザ、家族団らん·私的事務(S)ビザの居留許可証を持っている外国人は入国することができ、該当者はビザの再申請をする必要はありません。
もし中国での就労ビザ、家族団らん·私的事務ビザの居留許可証の期限が既に切れている場合は、中国の在外公館にて対応するビザの申請をしてから入国する必要があります。
二、外国人訪中ビザのための招聘状に関する政策
1. ビザのための招聘状の役割
当チームが深セン市人民政府外事弁公室に確認したところ、招聘状とは外国人が中国に入国するためのビザ申請の業務の一部であり、申請者がビザを取得できるかどうか、及び取得するビザの種類については、最終的には中国の在外公館、香港·マカオの外交部公署が決定します。
外国人が訪中ビザの手続きをするにあたっての条件については、中国の駐日本大使館及び領事館の発表した文書、条件に準じます。
2. ビザのための招聘状の申請範囲
深セン市人民政府外事弁公室が外交部と広東省人民政府外事弁公室の要求に基づき制定した『深セン市による疫病対策期間中の外国人訪中ビザのための招聘状申請のガイドライン』第一条第二項の「国外からの疫病の流入を防ぐため、疫病対策期間中は深セン市において中国の経済と人民の生活に関わる重要なプロジェクト及び活動に携わる外国人の訪中申請のみを受理します。各申請者は関連する政策・法規を遵守し、共に中国が努力して勝ち得た疫病対策の成果を保つことにご協力ください」の一文から、現在、深セン市がビザのための招聘状の申請を許可する主体は「深セン市において中国の経済と人民の生活に関わる重要なプロジェクト及び活動に携わる」外国人であることがわかります。
3. ビザのための招聘状の申請に必要な書類
申請報告書(申请报告)、『招聘する外国人の深セン訪問申請表(邀请外国人来深申请表)』、営業許可証(营业执照)或いはその他の登記·承認状、最新の商業主体の登記簿基本情報、前年度の納税証明、招聘者の制定した疫病対策業務計画、被招聘者の同意書(知情书)、被招聘者のパスポートの顔写真のページ、手続きをする人の情報(必ず申請する組織の従業員であること)、有効な『外国人就労許可通知(外国人工作许可通知)』或いは『外国人就労許可証(外国人工作许可证)』、その他の書類。
4.訪中ビザのための招聘状申請の仲介・代行行為について
深セン市人民政府外事弁公室の公布した『外国人の訪中ビザための招聘状申請の仲介・代行行為への厳格な取締に関する通知』によりますと、3月15日から招聘状の申請業務について、如何なる形式の仲介・代行行為も禁止されました。
深セン市人民政府外事弁公室は招聘状の申請手続きをしに来る人の資格について新たな条件を提示し、その条件とは手続きをしに来る人の身分証のコピーの提供(原本も確認されます)、申請者の社会保険費の納付記録明細書(当月以前の6か月間の記録)の提供です。
もし仲介·代行行為が発見された場合、深セン市人民政府外事弁公室は以下の措置を取ります。
(1)仲介·代行行為に関係する組織が招聘状を申請する資格、及び招聘状の送付者が引き続き深セン市人民政府外事弁公室で外国人の訪中に関する業務を行う資格を取り消します。
(2)直ちに関連部門に報告し、関連する組織の発行済み且つ未使用の招聘状を取り消します。
(3)状況に応じて関連部門に報告し、関係する組織が招聘した外国人の既に取得済みの訪中ビザを取り消します。
(4)関係する組織及びその責任者と招聘状の送付者に関連する違法・規則違反情報を企業と個人の信用情報(诚信记录)に登録します。
(5)違法・犯罪行為に関連する手がかりは公安等の部門に引き継ぎ、法に基づいて処理します。
三、日本国籍者が訪中ビザを申請する際の条件
中華人民共和国駐日本国大使館の発表した『中国製の新型コロナウィルスワクチンを接種した方の中国渡航の円滑化に関する通知』によりますと、2021年3月15日から、中華人民共和国駐日本国は中国製の新型コロナウィルスワクチンを接種し、且つワクチン接種の証明書を持つビザ申請者に対して以下のとおり便宜を図ります。
一、中国に渡航し各分野において操業再開する企業活動に従事する必要のある者及びその家族は、疫病発生前の条件に基づいた資料を準備し、申請書を提出することができます。
二、「緊急の人道主義的な必要性」により中国国民或いは永住者の配偶者、父母、子女とその他の生活を共にする近親者(兄弟姉妹、祖父母、孫)を含む外国籍の家族が中国に渡航する際に家族団らん、扶養、親族訪問、葬儀への参加、危篤状態の親族の訪問を理由として関連資料を提出し、ビザの申請をすることができます。
三、有効なAPECビジネストラベルカードを持っている者は、有効なAPECビジネストラベルカードと中国国内の招聘機関が発行した招聘状で商務・貿易(M)ビザの申請手続きをすることができます。
上述の状況以外に、中華人民共和国駐日本国大使館から当チームへのメールでの回答によりますと、「危篤状態の直系親族(父母、配偶者、子女、祖父母、孫)の訪問、或いは直系親族の葬儀に関する処理についての政策は相対的に見て厳しくないものですが、依然として病院からの証明書或いは死亡証明書、親族関係の証明書類(出生証明書、結婚証明書、戸籍簿、派出所による親族証明書、親族関係公正証書、戸籍謄本等)の提出が必要です」とのことです。
当チームの確認した内容と、現在のところ日本では中国製の新型コロナウィルスワクチンを接種できない状況を考慮しますと、深セン市において中国の経済と人民の生活に関わる重要なプロジェクトに携わる場合を除いて、中国の就労、家族団らん・私的事務の居留許可の期限が既に切れていて、中国国外にいる一般の外国人は基本的に中国への渡航はできません。
但し、一点ご留意いただきたいのは、外交部の報道官趙立堅は2021年3月15日の定例記者会見で「中国はワクチン接種の相互承認を他国と積極的に行っていけるよう願っている」と述べており、もし今後、日中両国の間でワクチンの相互認証が進めば、ビザの申請条件は緩和される可能性があります。
四、労働争議事例の共有
陳氏は2019年9月に某科学技術企業と『労働契約書』を締結し、入社後、該社で研究開発の業務を担当し、標準労働時間制度に基づき、毎週5日間、1日8時間の業務にあたりました。2020年3月、該社が残業手当を遅滞なく支払わなかったため、陳氏は該社に1通の『労働契約解除通知書』を郵送し、当弁護士チームに労働仲裁の申請を委託しました。当弁護士チームは残業の審査·批准記録、残業時の業務内容、証人としての同僚の証言を提出することで、残業したことが事実であることを証明し、労働仲裁委員は当方の残業手当の請求を支持しました。しかし会社側は仲裁における判断を不服とし、裁判所に訴訟を提起しました。その後の審理の過程において、該社は陳氏の提出した証拠が残業の事実を証明するには不十分であるという点のみによって抗弁をし、陳氏が残業していないことを証明する証拠は提出しませんでした。一審で裁判所の審理を経て、会社側の訴訟を棄却する判決が下され、当方は完全に勝利しました。
【事例内の経験の総括】
本件において、会社側が敗訴した原因は主に従業員が最初の段階で残業の事実を証明した後、該社は従業員が残業していないことを立証できなかったことです。『最高人民法院による労働争議事件の審理に適用する法律の若干の問題に関する解釈(一)』第四十二条は「労働者が残業手当を請求する場合、残業の事実が存在することについて立証する責任を負わなければならない。但し、労働者が残業した事実を証明する証拠を持っているにも関わらず、雇用者がこれを提供しない場合、雇用者は不利な結果を負担しなければならない」と規定しています。このことから、残業手当の請求について、労働者に最初の段階での立証責任があることがわかります。労働者が提出した証拠が確かに残業の事実があることを証明でき、雇用者がこれに反論する場合、証拠を提供して証明しなければならず、そうでない場合、証拠を提供できないことにより生じる不利な結果を負担することになります。本件において、陳氏は既に最初の段階での立証責任を履行しているため、会社側は残業が存在しないという事実について立証責任を負わなければいけません。該社は陳氏の実際の勤務時間または残業の手配等の関連する反証を提供できなかったため、陳氏が残業していないという証明をすることができず、立証責任を果たせなかったことにより生じた不利な結果を負い、陳氏に残業手当を支払うしかありませんでした。
【企業のコンプライアンス管理に関するご提案】
残業への報酬に関する紛争について、当弁護士チームからのご提案は以下のとおりです。
1.企業の残業に関する審査·批准制度の改善。従業員に残業が必要な場合、会社の残業に関する審査·批准のプロセスを経なければならず、審査·批准を通過して初めて有効な残業であると見なされ、審査·批准を通過せず自ら残業した場合、会社はこれを認めないものとします。上述の案件にあるような立証責任を果たせなかったことにより生じる不利な結果を防ぐため、会社の残業に関する審査·批准の記録を適切に保存します。
2.勤怠記録の保存。会社は残業の状況について確認するため、直近2年間の労働に関する記録、従業員自らが署名した勤怠表または指紋付きの電子勤怠記録を保存する義務があります。
3.既に審査·批准し実際に行われた残業に対し、遅滞なく残業手当を満額支払わなければならず、そうでない場合、会社は遅滞なく労働報酬を満額支払わなかったことを理由として、従業員から一方的に労働契約関係を解除された後、従業員に対し経済補償金を支払うことになる可能性があります。
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