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【車衛東弁護士チームニュースレター】2021年8月分(第十四号)

更新日:2021年9月15日

中国の最新法令情報や車衛東弁護士チームが担当した案件を通して企業のコンプライアンス管理等について解説するニュースレターの日本語版をお届けいたします。


一、最新法律情報


1.2021年7月22日、人力資源社会保障部は2021年第2四半期定例記者会見を開きました。会見内で『新たな就業形態における労働者の労働保障権益の維持に関するガイドライン』(以下略称『ガイドライン』といいます)を公布し、新たな就業形態における労働者の労働保障権益を適切に維持します。

中国人弁護士による解説

 『ガイドライン』の公布は、インターネット上のプラットフォームを拠点として就業している配達員、運転手、貨物自動車運転手、ライブコマース営業等の新たな就業形態の労働者の権益に対し、プラットフォーム企業の雇用行為を規格化し、プラットフォームエコノミーの健全な持続的発展のための規格化の促進に重要な意義を持っています。『ガイドライン』の主な内容は以下の通りです。

1.1雇用の具体的な条件の規格化について明確にしました。即ち、企業による雇用形式と新たな就業形態による労働者の就業形式の違いに基づき、企業が労働関係を確立している状況に該当する、または完全に労働関係を確立している状況には該当しないが企業が労働者に対し労働管理を行っている新たな就業形態の労働者の権益保障について負うべき相応の責任について明確にしました。プラットフォーム企業の取る労務派遣、外部委託等の提携関係的な雇用形式に対し、プラットフォーム企業と提携企業は法に基づき各自の雇用について責任を負います。

1.2労働者の権益保障制度の関連政策の完備について提案し、これには公平な就業、労働報酬、休息、労働安全、社会保険制度の完備、労災に関する保護の強化、労働者の要求を表明するシステムの改善等が含まれます。

1.3労働者の権益保障サービス向上の要点について提案し、全ての新たな就業形態における労働者を労働保障の基本公共サービスの範囲内に組み込み、労働者の享受する労働保障の公共サービス面に関連する問題に対し、就職斡旋サービスと社会保険処理の改善、職業訓練の強化、仕事と生活のサービスの保障の改善、子どもが居住地で平等に義務教育を受けることの保証等の措置について提案しました。

1.4業務推進に関連する要求について言及し、具体的な実施方法の制定、政策の宣伝の徹底、労働組合の権益保護サービス範囲の拡大、対立や紛争の調停の強化、監督管理の程度の引き上げ等を含め、各地区の各関連部門が共同で責任を負って管理し、労働者の権益保障業務システムを改善します。


2.2021年7月、深セン市第七期人民代表大会常務委員会第2回会議において『深セン経済特区社会養老保険条例』(以下略称『条例』といいます)が改正、採択され、当該の条例は2021年8月1日から施行されます。

中国人弁護士による解説

2.1納付基数と納付比率の調整。『条例』は深セン市政府に基本養老保険の納付基数の下限と納付比率を国と広東省の規定する基準に移行させる権限を委譲しました。現在、深セン市の養老保険の事業者の納付比率は14%、納付基数の下限は最低賃金を基準としており、共に国と省の関連基準を下回っているため、相応の調整が必要です。

2.2納付基数の確定。『条例』第十条は、従業員が毎月納付する基本養老保険料の納付基数を前月の給与の総額とすること。 / 新たに就業した、再雇用された、及び新規設立事業者の従業員の初月の納付基数はその初月給与の総額とすること。給与の総額が広東省の前年度の都市非私営組織における就業者の平均給与と都市私営組織における就業者の平均給与を加重計算した前年度の広東省の全都市組織の就業者の月平均の給与の100分の3を超える場合、超過した部分は納付基数として計上しないこと。 / 納付基数は市の人民政府が発表する最低賃金を下回らないこと。雇用者は毎月納付する基本養老保険料の納付基数をその組織の従業員の納付基数の総和とすること、を規定しています。

個人の納付者は市の人民政府が発表した最低賃金から前年度の広東省の全都市組織の就業者の月平均の給与の100分の3の範囲内で自ら納付基数を確定します。

従業員と個人の納付者の地域加算養老保険の納付基数と本人の基本養老保険の納付基数は同じです。

2.3養老保険料の徴収主体の名称の修正。『条例』は『中華人民共和国社会保険法』の説明を参照し、養老保険料の徴収主体の名称を「社会保険料徴収機関」とし、また、市の社会保険機関、市の社会保険料徴収機関が各自の職責に応じて具体的な基本養老保険、地域加算養老保険等の社会保険事務を請け負うことを明確にしています。同時に、職責の変更の必要に応じ、『条例』には社会保険徴収機関による期日通りの満額の養老保険料の徴収、雇用者の養老保険の納付状況の検査及び雇用者が規定に基づき養老保険を満額納付しなかった場合の取り締まり等の職責に関する規定が追加されました。


3.2021年7月1日、人力資源社会保障部は雇用者と労働者の法に基づき規格化された電子労働契約の締結を指導するため『電子労働契約締結ガイド』(以下略称『ガイド』といいます)を公布しました。

中国人弁護士による解説

3.1電子労働契約書の効力及び締結用プラットフォーム。『ガイド』は法に基づき締結した電子労働契約は法的効力を持つこと、雇用者と労働者は電子労働契約書の約定に基づき、全面的に各自の義務を履行しなければならないことを明確にしています。雇用者と労働者が電子労働契約書を締結する場合、電子労働契約締結プラットフォームを通さなければいけません。

3.2電子労働契約の締結プロセス。双方が電子労働契約を締結することに同意した場合、雇用者は電子労働契約の締結前に、労働者に対し電子労働契約締結のプロセス、操作方法、注意事項と完全な労働契約書の原文を確認、ダウンロードするための手段を告知しなければならず、また、労働者から費用を徴収してはいけません。電子労働契約は雇用者と労働者が信頼性のある電子署名を行った後に効力を発し、また、信頼性のあるタイムスタンプが付いていなければいけません。電子労働契約の締結後、雇用者は携帯電話のショートメール、WeChat、電子メールまたはアプリによる情報表示等により労働者に電子労働契約の締結が既に完了したことを通知しなければいけません。

3.3電子労働契約書の集積、保存。雇用者は労働者が速やかに電子労働契約書の原文のダウンロードと保存を行うよう促し、労働者に電子労働契約書を確認、ダウンロードする方法を告知し、また、必要な指導と手伝いを提供しなければいけません。雇用者は労働者が一般的に使用されている設備を使用して随時、電子労働契約書の完全な内容を確認、ダウンロード、プリントアウトできることを確実に保証しなければならず、労働者から費用を徴収してはいけません。労働者が紙による電子労働契約書を必要とする場合、雇用者は少なくとも1通無償で提供し、また、捺印等の方法で原本の電子版と一致していることを証明しなければいけません。電子労働契約書の保存期間は『中華人民共和国労働契約法』の労働契約書の保存期間の規定に適合していなければいけません。

3.4電子労働契約の締結時には以下の事項に注意が必要です:

3.4.1電子労働契約の締結者の情報の真正性の確実な保証。雇用者と労働者は電子労働契約締結プラットフォームに提出する身元に関する情報が真実、完全、正確であることを確実に保証しなければいけません。電子労働契約締結プラットフォームは電子証明書、ネットワーク情報照合、生体認証照合、携帯電話のショートメッセージ等の技術的手段を通じ、締結者の身元と署名の意思を偽りなく反映させ、また、照合と確認の過程を記録、保存しなければいけません。条件を備えている場合は、電子社会保険カードを使用して実在の人物の実名認証を行うことができます。

3.4.2情報の保護と安全に対する注意。電子労働契約書の情報の管理、集積と応用は合法且つコンプライアンスに則ったものでなければならず、情報の主体の合法的な権益を侵害してはいけません。電子労働契約締結プラットフォームは安定した運用、切れ目ないサービスの提供、収集または使用した個人情報、契約内容に関する情報とログ情報の漏洩、改竄、紛失の防止を確実に保証します。情報の主体の同意または法律法規による許可がない場合、他人に対し不法に電子労働契約書の閲覧、集積等をさせるサービスを提供してはいけません。


4.2021年6月29日、深セン市税務局は『深セン市の2021年度の個人所得税に関連する税引前控除及び免税基準の調整に関する通告』(以下略称『通告』といいます)を公布し、2021年度の個人所得税に関連する税引前控除及び免税基準を調整し、2021年6月1日(税金の発生、計算日)から執行されます。

中国人弁護士による解説

 『通告』の主な内容は以下の通りです。

4.1深セン市の個人が雇用者との労働契約の解除により一括で取得した補償による収入の免税基準は418308元に調整され、超過した部分については、財税〔2018〕164号の関連規定に基づいて個人所得税が計算、徴収されます。

4.2事業者と従業員個人が拠出する住宅積立金の月平均の給与は34860元(11620元×3倍)を超えてはならず、上述の規定の比率または基準を超えて拠出した住宅積立金については、超過した部分を個人の当期の給与、所得に組み込んで個人所得税を計算、徴収しなければいけません。

4.3企業向け年金、職業年金の個人による拠出部分について、本人の拠出する給与の課税基数の4%を超えない基準内で、一時的に個人の当期の課税所得額の中から差し引きます。そのうち、給与の課税基数は34860元(11620元×3倍)を超えてはならず、規定の基準を超えて納付した部分については、個人の当期の給与、所得に組み込んで個人所得税を計算、徴収しなければいけません。


5.2021年6月25日、国家税務総局は『企業所得税の若干の政策における徴収と管理の規格に係る問題に関する公告』(以下略称『公告』といいます)を公布し、2021年度及びそれ以降の年度の確定申告、税金の納付に適用します。

中国人弁護士による解説

 『公告』の重要な内容は以下の通りです。

5.1公益性寄付による支出に関連する費用の控除の問題について。企業が非貨幣性資産を寄付する過程で発生する輸送費、保険料、人件費等の関連支出について、全て国家機関、公益性社会組織の発行する公益寄付の領収書に記載されている金額内に含める場合、公益性寄付による支出として規定に基づき税引前に控除します。上述の費用に公益性寄付の領収書に記載されている金額を含めない場合、企業の関連費用として規定に基づき税引前に控除します。

5.2転換社債を株式に転換した場合の税務処理の問題について。

5.2.1購入側の企業の税務処理①購入側の企業が転換社債を購入し、約定した利率に基づき利息収入を取得している保有期間中、法に基づき企業所得税を申告、納付しなければいけません。②購入側の企業が転換社債を株式に転換する際、未収利息を併せて株式に転換した場合、当該の未収利息が会計上確認されていない収入であっても、税収上は当期の利息収入として申告、納税しなければいけません。転換後は当該の債券の購入価格、未収利息と支払った関連の納税額を当該の株券の投資コストとします。

5.2.2発行側の企業の税務処理。①発行側の企業は発生した転換社債の利息について、規定に基づき税引前に控除します。②発行側の企業が約定に基づき購入側の保有している転換社債と未払利息を併せて株式に転換する場合、未払い利息は支払い済みと見なし、規定に基づき税引前に控除します。

5.3越境混合型投資業務を行う企業の所得税処理の問題について。国外の投資者が国内で混合型投資業務に従事する場合、『国家税務局による企業混合型投資業務の企業所得税処理に係る問題に関する公告』(2013年第41号)第一条の規定する条件を満たしていれば、当該の公告第二条第一項の規定に基づき企業所得税の処理を行うことができますが、同時に以下の2種類の状況に該当する場合は除外します:5.3.1当該の国外投資者と国内の被投資企業に関連がある場合。5.3.2国外投資者の所在国家(地区)が当該の投資収益を株式投資収益として認定しており、且つ企業所得税を徴収しない場合。同時に上述の規定の状況に該当する場合、国内の被投資企業が国外投資者に支払う利息は配当と見なされ、税引前控除を行ってはいけません。

5.4企業所得税の査定徴収方式が帳簿検査徴収方式に変更された後の関連資産の税務処理の問題について。

5.4.1企業が資産取得の際の領収書を提供できる場合、領収書に記載されている金額を税額算出の基礎とします。資産取得の際の領収書を提供できない場合、資産取得の際の契約書(協議書)、資金支払証明、会計計算資料等に記載されている金額を税額算出の基礎とします。

5.4.2企業が査定徴収方式の期間に投入、使用した資産について、帳簿検査徴収方式への変更後、税法の規定する減価償却、償却年数に基づき、当該の資産の投入、使用年数を差し引いた後、残りの年数について引き続き減価償却、償却額を計上し、税引き前に控除します。

5.5文化財、芸術品の資産の税務処理の問題について。企業の購入した文化財、芸術品を収蔵、展示、保全及び評価増させている場合、投資資産として税務処理を行います。文化財、芸術品資産の保有期間中に計上した減価償却、償却費用の税引前の控除は認められません。

5.6企業が政府の財政資金を取得した場合の取得時間の確認の問題について。企業が市場価格に基づき商品の販売、労務サービスの提供等を行い、政府の財政部門により企業の販売する商品、提供する労務サービスの数量、金額に基づき一定の比率で全てまたは一部の資金が支払われる場合、発生主義の原則に基づき収入を確認しなければいけません。上述の状況を除き、企業が取得した各種政府財政による財政支援、補助、補償、税金の還付等の支払いについて、実際に収入を取得した時間に基づいて収入を確認しなければいけません。


二、労働争議の事例共有及び企業のコンプライアンス管理


事例の共有1

 紀氏は2018年に深セン市の某科学技術企業に入社しましたが、2020年初めに会社が経営不振を原因として紀氏の給与15万元の支払いを滞納しました。このため、紀氏は当弁護士チームに労働仲裁の申請を委託し、仲裁委員会は当方の会社に対する滞納した給与の支払いを求める仲裁請求を支持し、仲裁の裁決発効後、当弁護士チームは裁判所に強制執行を申請しましたが、会社はこの時点で既に登記抹消しており、強制執行できる如何なる財産もありませんでした。

 当弁護士チームは調査の結果、会社は紀氏に給与未払いのまま登記抹消しており、会社の主な株主、法定代表者である張氏は会社の未払いの給与について弁済する責任を負うべきであると考えたため、張氏を被執行者に追加し、張氏の名義の財産15万元について強制執行するよう申請しました。裁判所は審理後に当方の主張を支持し、張氏が紀氏に対する15万元の未払い分の給与を弁済する責任を負うよう判決を下し、現在、張氏は既に支払い義務を履行しており、当弁護士チームは紀氏の15万元の未払い分の給与の回収に成功しました。

【事例内の経験の総括】

 本件の審理の過程において、張氏は異議を申し立て、当該の会社は有限責任会社であり、自らの持ち株比率は60%であるため、負うべき責任も限定的であること、会社の登記抹消前に清算チームは設立されていたが、張氏は清算チームのリーダーではなく、また、清算チームは公示を行った後清算報告書を作成して登記抹消を申請しており、当該の会社は法に基づき清算されたものであること、同時に、株主決議書に署名する前に、清算チームに対して問合せと原告の債権に関する注意を促し、清算チームも処理する意向を示したが、どのように処理したかは不明であることを主張し、本件の被執行人になることに同意しませんでした。

 当弁護士チームは分析の結果、以下のように考えました。紀氏の債務は会社の清算、登記抹消前に既に確定しているものであり、現時点では会社が既に登記抹消され、法人主体がなくなっているため、既に紀氏の債務を弁済することはできません。関連する法律及び司法解釈によれば、清算チームは設立日から10日以内に債権者に通知をしなければならず、また、60日以内に新聞上で公示を行わなければいけません。会社の清算時、清算チームは会社の解散と清算について書面にて全ての既知の債権者に通知し、公示を行わなければいけませんが、現時点で会社の清算チームが当時に上述の書面による債権者への通知の義務を履行したことを証明する証拠はありません。張氏は法定代表者、株主及び会社の清算チームのメンバーとして、既に清算チームに対して問合せと紀氏の当該の債権に関する注意を促したことを説明しましたが、これに関する十分な証拠を提供して証明することができず、また、通知の形式においても上述の書面による通知に関する関連規定に適合していませんでした。

上述の内容を総括しますと、会社の清算チームは通知の義務を履行しておらず、清算のプロセスも法律の規定に適合しておらず、また、これにより紀氏が遅滞なく債権の申告をして支払いを受けることができない状況を引き起こしたため、紀氏は清算チームのメンバーである張氏がこれにより引き起こした損害について賠償責任を負うよう要求する権利を有しています。

【企業のコンプライアンス管理に関するご提案】

 会社の清算時、清算チームは会社の解散と清算について書面にて全ての既知の債権者に通知し、また、会社の規模と営業地域の範囲に応じて全国または会社を登記した場所のある省レベルで影響力を持つ新聞上で公示を行わなければいけません。このため、当弁護士チームは、清算、登記抹消時に既に労働者への給与未払いが確定している会社に対し、労働者が遅滞なく債権を申告できるよう、清算を行うことを書面にて通知することをお勧めします。もし清算をしないまま直ちに登記抹消し、会社が清算を行えない状況を引き起こした場合、有限責任会社の株主、株式会社有限会社の取締役と支配株主が労働者から被執行人として追加されるよう申請され、会社の労働者に対する未払いの給与について連帯で弁済しなければならなくなる可能性が非常に高まります。


事例の共有2

 2020年6月、深セン市の某社は新製品の開発の必要性から李氏を雇用して双方は労働契約を締結し、李氏は会社の新製品開発を担当することになり、契約期限は2年、試用期間2か月でした。2020年7月中旬、会社は李氏にメールを送り、2020年7月15日に労働契約を解除することを通知しました。李氏は不服に感じ、会社に労働契約の履行の継続を要求することを理由として仲裁委員会に仲裁の申し立てをし、仲裁委員会は会社が違法に労働契約を解除したと考え、双方が労働契約の履行を継続するよう裁決しました。会社は労働契約の解除が違法であるとされた件には異議を唱えませんでしたが、双方が労働契約の履行を継続することはできないと考え、当弁護士チームに裁判所への訴訟の提起を委託しました。

 当弁護士チームは委託を受けた後、本件に関する資料を確認、分析し、李氏の在職期間に存在した新製品研究開発部門は既に廃止されており、元の職位は存在せず、また、欠員のある職位もなく、このほか、会社と李氏はお互いに相手に不満を感じており、双方に信頼関係の基礎が存在しないことから、労働契約の履行を継続することができないため、会社は李氏と労働契約の履行が継続できず、また、これについて相応の証拠が準備されていると考えました。裁判所は第一審の審理後、当方の要求を支持し、会社は李氏との労働契約の履行を継続する必要はないとの判決を下しました。李氏は第一審の判決を不服に思い上訴を申し立てましたが、第二審でも裁判所は第一審の裁判所の意見に同意し、最終的に上訴を棄却し、原判決を支持しました。

【事例内の経験の総括】

 会社が違法に労働契約を解除したと認定された前提の下、双方が労働契約の履行を継続することができるかどうか判断する際、客観的に履行できない状況が存在するかどうかを考慮する以外に、労働関係において人的従属性という特殊な属性に基づいた限定的で主観的な検討も行いました。1点目は双方が労働関係を履行するのに必要な信頼関係の基礎を築けているかどうか、2点目は元の労働契約を履行する現実的な可能性が存在するかどうかです。

本件において、李氏の所属していた部門、職位共に存在せず、また、欠員のある職位もないことから、双方の客観的な視点から見ても既に労働契約は履行できません。主観的な視点から見た場合、当弁護士チームは主に以下の面から双方が労働契約の履行を継続できないと主張しました。(1)会社が李氏との契約解除をした際、李氏は入社後わずか1か月ほどの試用期間中であり、勤務期間は相対的に見てやや短く、双方は客観的に見て労働関係の履行における信頼関係の基礎を十分に確立していません。(2)李氏の上司及び同僚は皆、李氏に対して不満を感じたりネガティブな評価をしたりしており、李氏も法定審問において何度も会社に対する不満を表しており、双方の主観的な矛盾が比較的大きいため、既に調和が取れていて安定した労働関係を構築、発展させることができる可能性はありません。(3)労働契約における人的従属性の特徴に基づき、従業員の業務におけるパフォーマンス、キャリアアップ、及び会社全体の運用と発展に対する影響から考慮し、双方は既に労働契約の履行を継続する基礎を備えていません。

 このため、裁判所は現状に照らして慎重な考慮と利益に関する判断を行い、双方の労働契約は主観的にも客観的にも既に履行を継続するための基礎を備えていないと考え、当方の要求を支持しました。

【企業のコンプライアンス管理に関するご提案】

 本件において、会社には違法な労働契約の解除という状況が存在しており、会社側は当弁護士チームに李氏が試用期間中に採用条件を満たさなかったため労働契約を解除した、とは説明したものの、労働契約解除の際にこの経緯を李氏に告知したことを証明する十分な証拠を提供していないため、証拠を提出できなかったことによる不利益を被ることに注意する必要があります。

 このため、試用期間中に採用条件を満たさなかった従業員に対し、会社が労働契約を解除しようとする場合、当弁護士チームは会社が客観的な評価手順と評価基準を通して従業員が採用条件を満たしていないことを証明し、同時に、会社が試用期間中に採用条件を満たさなかった従業員についてその従業員とコミュニケーションを取り、相応の証拠を保存することをお勧めします。そうでない場合、訴訟において証拠を提出できなかったことによる不利益を被り、違法に労働契約を解除した責任を負うことになります。

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