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【車衛東弁護士チームニュースレター】2020年9月分(第四号)

中国の最新法令情報や新型コロナウイルス流行下での企業の生存と発展の道等について解説するニュースレターの日本語版をお届けいたします。


一、最新法律情報


1.8月20日、最高人民法院は新聞発表会にて、新たに改訂された『民間賃借事件の審理に関する法律適用の若干の問題に関する規定』(以下、「規定」という)を発表し、記者の質問に回答した。

中国人弁護士による解説

人民裁判所が民間の貸借事件を審理する際に適用する借入金利の基準は以下の通りである。

1.1 2020年8月20日までに、人民裁判所が新たに受理した第一審の民間貸付紛争案件は、以前の規定すなわち借入年率は最高で24%として執行される。

1.2 2020年8月20日以降、人民法院が新たに受理した第一審の民間貸付紛争事件は次の2つの基準を採用する。 1.2.1 貸借行為が2019年8月20日以前に発生しているものは、借入年利率は原告が起訴した年の基準利率の4倍を超えてはならない。

1.2.2 貸借行為が2019年8月20日以降に発生しているものは、契約成立時の年間の基準利率の4倍を超えてはならない。


2. 2020年8月26日午後、深セン市第6期人民代表大会常務委員会第44回会議は「深セン経済特区科学技術革新条例」(以下「革新条例」という)を採択し、2020年11月1日から実施する。

中国人弁護士による解説

 現在、中国の会社法は「株式の発行は、公平、公正の原則を実行し、同種類の各株式は同等の権利を有するべきである。同時期に発行された同種の株式は、発行条件と価格が同じでなければならない。いかなる企業または個人が引受けた株式も、同じ価格を支払わなければならない。」と規定しており、「同株同権」という制度が実行されている。このような公平に見える制度には実際は弊害がある。企業が創業の初めに、創始者の株主は技術を持っているが、会社の登録資本金は小さい。その後、何度か株式の融資をしていくと株主の持ち株比率は絶えず希釈されてき、会社の支配権を失うリスクがあり、科学技術企業の創業株主にとって不利益を被ることがある。

 本条例は会社法を臨機応変にし、深センで登記された科学技術企業が「同株別権」の制度の下、株式を差異化させ、株式の議決数を規定する特別議決権株式を許可し、このような企業が深セン証券取引所で上場取引することを許可している。この規定により、会社の創業株主は株式が絶えず希釈される状況下で、依然として持株権を保ち、企業の融資ルート拡大しながら、安定した発展を維持し、新興市場の登録制の発展を大いに促進することになる。 

アリババ、京東等の中国企業は米国で上場することを選択している理由の一つが「同株別権」が企業に有利だということが大きいだろう。2018年に香港交易所が上場規則を改訂し、「同株別権」を許可した翌年にアリババは香港で上場しており、「同株別権」が企業に与える影響が大きさを証明した。深セン市は本条例を発表することにより深センの科学技術企業に対する魅力を高め、科学技術企業の長期安定発展に有利にしている。


3.2020年8月26日午後、深セン市六期全人代常務委員会第四十四回会議は「深セン経済特区個人破産条例」(以下「破産条例」という)を採択し、2021年3月1日より実施するとした。

中国人弁護士による解説

3.1 この条例は中国の初の個人破産制度である。条例によると、深セン市在住で、同市で社会保険料を3年以上続けて納付していることが条件。生産経営、生活消費による債務返済能力の喪失または債務超過の場合、法律に基づき廃業して再起または和解を行うことができ、3年から5年の間に厳格な行動制限を受け観察期間が設けられ、残りの債務を免除することができる。

3.2 本弁護士チームからの注意事項:多くの企業は今まで対外契約を締結する際、通常大株主、法定の代表者などの自然人に連帯責任を負うよう求め、リスクを回避するようにしてきただろう。しかし、本条例が施行された後、企業は対外契約を締結し、大株主、法定代表者等の自然人に連帯責任を負わせるように要求する場合、より慎重に信用調査等の信用状況に注意し、そしてできるだけの担保、保証人を要求し、各種保険などの加入により取引の安全性を強化しなければならない。大株主、法定代表者等の自然人に連帯負担させるだけでは取引の安全性を確保できない。債務の履行したときに、連帯責任を負った自然人が個人破産を申請し、債権を取り戻せないというリスクを防がなければならない。


4.国務院弁公庁は2020年7月21日に、『国務院弁公庁のビジネス環境の更なる最適化と関するサービスの強化に関する実施意見』の中で、「2020年末までに、付加価値税専用領収書の電子化を実現し、主に税金に関わるサービス事項は基本的にオンライン処理を実現する」と明確にした。

中国人弁護士による解説

以前は企業が領収書を発行する際、電子税務局で企業の納税番号を記入して領収書を発行するのみだった。

当弁護士チームによる注意喚起:

4.1 9月1日から、企業が領収書を発行するには、企業の法定代表者と関連税務担当者の実名認証が必要となる。

4.2 2020年3月23日に公布された「財政部、国立公文書記録管理局の電子会計証憑の精算・記帳・保存の規範に関する通知」第4条に基づき「電子書類と紙の書類はどちらも保存しなければならない」と規定している。企業の会計担当者は領収書を整理する時、紙の書類と電子ファイルをどちらも保存することに注意が必要である。いずれかが保存されていない場合、『中華人民共和国会計法』、『中華人民共和国書類法』などの関連法律、行政法規により処罰される可能性がある。


二、新型コロナウイルス流行下での企業の生存と発展の道

1.サプライヤーの評価制度の設定  企業がサプライヤーの選択基準と条件を定める際、サプライヤーの生産能力、技術力、製品の品質保証及び類似製品の検査結果等を総合的な考慮に取り入れ、より高い実行可能性を持つため、各指標を数値化した標準書類を作成するべきである。同時に、企業は候補となっているサプライヤーに対して総合的・公平公正な評価をするため、仕入部、生産部、品質管理部、財務部及びその他関連する部門の従業員で構成される審議チームを結成するとよい。 2.重要なサプライヤーとの提携前に適正調査を行う  企業にとって重要なサプライヤーに焦点を合わせて、最終的に提携を決定する前に独立した第三者に委託し、公開/非公開のルートを通じて当該サプライヤーに対する適正調査を行うことを推奨する。適正調査の範囲にサプライヤーの創立された背景、株主構成、契約の履行状況の履歴、これまでの訴訟・紛争の履歴、製品の品質と社会における評判の履歴等を含めることで、サプライヤーの履行能力をより的確に確認・判断する。 3.サプライヤーと協議・交渉し、合理的な製品価格を設定する  企業はサプライヤーと協議・交渉する前に、まずサプライヤー側の合理的なコストの基準値を理解しておく必要がある。仕入市場の調査と情報収集・整理をすることに留意し、仕入部は市場の各種同類製品を収集し、最低どのくらいのコストで必要な製品が作れるかを分析し、同時にサプライヤーの製品コストやサービス状況を把握しておかなければいけない。価格交渉の段階でサプライヤーに値下げを求め、最も理想的な価格を設定するため、サプライヤーに製品或いは部品の見積もり価格の明細リストを提供するよう求め、そのリストを分析し、合理的でない項目を特定する。このほか、企業は製品の仕入れ価格変動の法則を分析し、最適な仕入れのタイミングを把握し、価格が最も低いときにサプライヤーと製品の価格について交渉し、コストを最大限に下げるとよい。 4.仕入れた物品の倉庫への搬入出に対する効果的な監視と定期的な在庫点検を行う  従業員とサプライヤーが結託し、企業の権益を損なうことを防ぐため、調達契約を結ぶ際、サプライヤーがその製品を販売するため不当な競争方法として従業員に賄賂を送ることを禁止し、それが守られなかった場合、納品資格を取り消し、法に基づき賄賂を送った疑いがあるとして公安機関に届け出る旨を取り決めておくことを推奨する。仕入れた物品の倉庫への搬入出を管理する制度を定めて厳格に実施することで、仕入れた物品が輸送中に人為的に減らされ、また、過剰在庫の物品が新たに仕入れた物品であると偽られるような状況が発生することを撲滅、或いは減少させる。同時に、定期的に事務・管理部門の職員主導で倉庫部門の職員と連携して倉庫の在庫点検を行い、在庫が紛失した物品に対しては法に基づいて責任を追及しなければならない。 5.サプライヤーへの継続的な配慮と監督を強化する  企業とサプライヤーが提携関係に達した後、独立した第三者に委託して定期的(例えば四半期ごと或いは半年ごと)にサプライヤーに対して追跡調査を行う。調査内容は当該サプライヤーがまだ営業許可を持っているかどうか、正常に経営されているか、契約の履行状況が良好であるか、重大な訴訟・紛争事件が起きていないか、及び財務状況が良好かどうか等を含む。企業は調査結果とサプライヤーの以前の納品状況、納期、品質及びアフターサービスのレベル等を組み合わせて総合的な評価を行い、その評価結果に基づいて来期の仕入れ比率を割り当てる。同時に、企業は当該サプライヤーと継続して提携する場合のリスクを評価し、もし比較的高いリスクが存在することが確認された場合、サプライヤーに対して履行が完了していない義務について急いで履行することと担保の提供を要求するか、或いは適時、提携関係を終了し、損失を防ぐとよい。

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