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事例 / ニュース

【車衛東弁護士チームニュースレター】2021年4月分(第十号)

中国の最新法令情報や車衛東弁護士チームが担当した案件を通して企業のコンプライアンス管理等について解説するニュースレターの日本語版をお届けいたします。


一、最新法律情報


1.2021年3月1日、広東省政府は『広東省の就業の更なる安定と拡大のための若干の政策措置』(以下『措置』といいます)を発表し、「就業の拡大」をめぐる新たな目標について、59項目の政策措置を打ち出し、「負担の軽減、成長の育成、重点の安定、技能の強化、保障の改善」の5つの面から就業の安定化と促進を行います。

中国人弁護士による解説

 『措置』は企業の労働者雇用のコスト面の負担を軽減するため、以下の措置を打ち出しています。

一、各地の従業員の基本医療保険統一基金の累計残高(一括で前納された基本医療保険費用を除く)の支払い可能月数が9か月を超えた時、雇用者の納付料率を段階的に引き下げることができ、実施期間は2021年12月31日までです。

二、当初の各市の段階的な労災保険料率引き下げの政策は2021年4月30日まで実施され、2021年5月1日から省レベルの統一労災保険業界基準料率の標準に関連する規定に基づいて実施されます。2021年5月1日から2022年4月30日まで、全省統一で段階的に労災保険料率を50%引き下げる政策が実施されます。

三、段階的に失業保険料率を引き下げる政策、失業保険の変動料率に関する政策の実施期間は2022年4月30日まで延長されます。

『措置』は「一照多址(一許可証多住所)」改革の推進も打ち出しており、企業が同一の地級以上の市の範囲内で複数の経営住所を登録することを許可し、支店や支部の登記手続きを免除する等、企業に対して有利な措置を取っています。


2.2021年3月1日、最高人民法院は『最高人民法院、最高人民検察院、公安部、中国証券監督管理委員会のより規範的な人民法院による上場企業の質権を設定された株式の凍結業務に関する意見』(以下『意見』といいます)を公布し、2021年7月1日から実施します。

中国人弁護士による解説

 『意見』の質権者の株式の換価に関する主な規定は以下のとおりです。

一、質権設定された株式がシステムに登録された後、質権者がその質権の存在と質権を実現するための条件を満たしていること等を証明する資料を持っており、人民法院に証券取引所の集中入札、ブロック取引の方法で質権の設定された範囲内での株式の換価を申請する場合、許可されなければいけません。但し、法律、司法解釈等に別途規定がある場合は除きます。

二、質権者が合意に基づく譲渡を通して株式の換価を申請する場合、人民法院が審査を経て事件の当事者の利益、国家の利益、社会の公共の利益が害されず、尚且つ相応の価額にコントロールできると判断した前提の下、許可することができます。

三、質権者が自ら株式を換価し、尚且つその金額が債務者の資金口座或いは人民法院の指定した口座に入金された後、人民法院に換価金の支給により債権の実現を申請する場合、許可されなければいけません。但し、法律、司法解釈等に別途規定がある場合は除きます。

当弁護士チームは、質権者が自ら株式を換価し債権を実現する権利を有する意義は大きく、質権者が遅滞なく債権を実現するのに有利なだけでなく、実施する措置が質権設定された株式の市場に対する影響を最大限に引き下げることもでき、また、質権者が債権を実現し質権を解除した後、質権解除済みの株式の人民法院によるその後の執行を円滑化することができます。


3.2021年3月4日、最高人民法院、最高人民検察院、公安部、司法部は『虚偽訴訟の犯罪への処罰業務の更なる強化に関する意見』(以下『意見』といいます)を公布し、2021年3月10日から実施します。

中国人弁護士による解説

一、9種類の虚偽訴訟の犯罪の多発している事件分野の重点的な注目と取締を受ける範囲への組み込み

 『意見』第五条の規定は以下の事件に対し重点的に関心を寄せています。(1) 民間の貸借紛争事件(2)家屋の購入制限、 自動車の割り当て指標の制御に関わる物品による債務弁済事件(3)離婚訴訟により当事者の一方が被告となる財産紛争事件 (4) 既に債務超過或いは被執行者とされた自然人、法人と非法人組織を被告とする財産紛争事件(5) 立ち退き区画範囲内の自然人を当事者とする離婚、財産分割、相続、家屋の売買契約紛争事件(6)会社の分割、合併と企業の破産紛争事件 (7) 労働争議事件(8)馳名商標(著名商標)認定に関連する事件(9)その他重点的に関心を持つ必要のある民事事件。

二、虚偽訴訟の責任

(一)訴訟当事者とその他訴訟に関与する者が故意に虚偽訴訟の犯罪活動を起こしたり関与したりした場合、人民法院は罰金を科す、拘留する等、民事訴訟への妨害に対する強制措置の適用を拡大するべきであり、事件の関連資料を公安機関に引き渡す前に、民事訴訟法の規定に基づき先に罰金を科し、拘留することができる。

(二)司法職員が職権を利用して虚偽訴訟に関与した場合、法律法規に基づき厳しく処分しなければならず、犯罪にあたる場合は法に基づき厳しく刑事責任を追及する。

(三)弁護士、一般的な法律サービスの従事者、司法鑑定者、公証人、仲裁人が職務上の便宜を利用して虚偽訴訟に関与した場合、規定に基づき行政処分或いは業界における懲戒処分を行い、犯罪にあたる場合は法に基づき司法機関に引き渡して処分する。同時に、関連する規定に基づき厳しく法的責任を追及する。


4.2021年3月3日、『最高人民法院の知的財産権侵害事件の審理への懲罰的損害賠償の適用に関する解釈』(以下『解釈』といいます)を公布し、公布日から施行します。

中国人弁護士による解説

 『解釈』の注目点は以下のとおりです。

一、「故意」と「悪意」の間の関係が整理、明確化されました。懲罰的損害賠償の主観要件について、『民法典』の規定する主観要件は「故意」であり、『商標法』第六十三条第一項、『不正競争防止法(反不正当竞争法)』第十七条第三項の規定は「悪意」です。『解釈』第一条第二項は「本解釈でいうところの故意は、商標法第六十三条第一項と不正競争防止法第十七条第三項の規定する悪意を含む。」と規定し「故意」と「悪意」に対して一貫性のある解釈をしており、「故意」と「悪意」の適用範囲に誤解が生じることを防止しています。

二、状況が深刻な場合の認定基準が明確にされました。『解釈』第四条は人民法院が知的財産権侵害の状況が深刻であると認定する際、総合的に権利侵害の手段、回数、権利侵害行為が続いた期間、地域範囲、規模、結果、権利侵害者の訴訟中の行為等の要素を考慮しなければならないと規定しています。被告が以下の状況に当てはまる場合、人民法院は状況が深刻であると認定することができます。(一)権利侵害により行政処分を受けた或いは法院での裁判により責任を負った後、再度同じ或いは類似の権利侵害行為を実施した場合。(二)知的財産権の侵害を職業にしている場合。(三)権利侵害の証拠を偽造、損壊或いは隠匿した場合。(四)保全裁定の履行を拒否した場合。(五)権利侵害によって利益を得た或いは権利者が莫大な損害を受けた場合。(六)権利侵害行為が国家の安全、公共の利益或いは人の健康に危害を及ぼす可能性がある場合。(七)その他状況が深刻であると認定することのできる状態。

三、懲罰的損害賠償の基数の計算方法が明確にされました。『解釈』第五条は人民法院が懲罰的損害賠償の基数を確定する際、それぞれに関連する法律に基づき、原告が実際に損害を受けた額、被告の違法な所得の額或いは権利侵害により得た利益を計算の基数としなければならないと規定しています。この基数は原告が権利侵害を制止するために支払った合理的な支出は含みません。法律に別途規定がある場合、その規定に準じます。


5.2021年3月19日、中国証券監督管理委員会は『上場会社情報開示管理弁法(2021年改正)』(以下『弁法』といいます)を公布し、20201年5月1日から正式に施行します。

中国人弁護士による解説

 『弁法』の注目点は以下のとおりです。

一、定期報告書の制度を改善しました。今回の改正で『弁法』は定期的な四半期の報告書の届け出の要求を削除し、新しい『証券法』との整合性を保ちました。このほか、『弁法』第十六条は、定期報告書の内容は上場会社の取締役会の審議を通過しなければいけないことを明確に規定しました。取締役会の審議を通過していない定期報告書は公表してはいけません。同時に、『弁法』は董事(取締役)、監査役、高級管理職が意見を発表する際は周到且つ慎重である原則に準拠しなければならないことを強調しており、董事、監査役が定期報告書の内容の真実性、正確性、完全性を保証する術がない場合、或いは異議がある場合、反対票や棄権票を投じなければいけないことを明確に規定しました。

二、情報開示の事務管理制度を改善しました。『弁法』第三十条は内部情報提供者の登録管理制度を追加し、『弁法』第三十三条第二項では上場会社は董事、監査役、高級管理職が対外的に情報を公表するにあたって行動規範を制定しなければならないという要求を新たに追加しました。

三、監督管理を強化し、法的責任を明確化しました。今回の改正で『弁法』は上場会社の監督管理面において常用される監督管理措置のタイプを改善命令、監督管理に関する談話、警告書の発行等を用いることで、より改善、明確化しました。上場会社の董事、監査役が異議声明の制度を濫用することに対して特化した法的責任を設定し、中国証券監督管理委員会は関連する人員に対し警告を与えることができ、また、国務院が規定した限度額以下の罰金に処することができます。状況が深刻な場合、関連する責任者に対し証券市場への参入禁止の措置を取ることができます。


6.2021年3月15日、国家市場監督管理総局は新しい『電子商取引監督管理弁法』(以下『弁法』といいます)を制定、公布し、2021年5月1日から施行します。

中国人弁護士による解説

一、「国民のための労務」と「少量且つ散発的な金額」の2種類の状況に対し主体登記を免除します。電子商取引の経営者は原則として皆、法に基づき市場主体登記をしなければいけませんが、小規模経営者の登記が難しいことを考慮し、『弁法』は「国民のための労務」と「少量且つ散発的な金額」に対し主体登記を免除し、また、国民の労務」と「少量且つ散発的な金額」に対し具体的な定義、即ち「国民のための労務」とは個人のためにインターネットを通して清掃、洗浄、裁縫、理髪、引っ越し、鍵の調整、配管のメンテナンス、家具家電の修理整備等、法に基づき許可を取得する必要のない労務に従事することを指し、「少量且つ散発的な金額」とは年間の取引額の累計が10万元を超えないものを指す(同一の経営者が同一のプラットフォーム或いは異なるプラットフォームで複数のインターネット上の店舗を開設した場合)、としました。

二、電子商取引プラットフォームサービスを提供するSNS、オンラインライブ配信プラットフォームを監督管理範囲に組み込みました。『弁法』はSNS、オンラインライブ配信等のオンラインサービスの提供者を経営者としてインターネット上で経営の場、商品の閲覧、発注の生成、オンライン決済等の電子商取引プラットフォームサービスを提供する場合、法に基づき電子商取引プラットフォームの経営者の義務を履行しなければならないと規定しました。上述の電子商取引プラットフォームサービスを通して電子商取引活動を展開している経営者は、法に基づきプラットフォーム内の経営者の義務を履行しなければいけません。

三、プラットフォーム間の公平な競争を支援します。『弁法』は電子商取引プラットフォームの経営者がプラットフォーム内の経営者によるプラットフォーム内での取引、取引価格及びその他の経営者との取引等に対して非合理的な制限をかけたり、或いは非合理的な条件を付け加えたりすることで、プラットフォーム内の経営者の自主的な経営に干渉してはならないと規定しています。具体的には(一)検索結果の評価引き下げ、商品の陳列棚からの撤去、経営の制限、店舗のブロック、サービス費用の引き上げ等の方法を通して、プラットフォーム内の経営者が複数のプラットフォームでの経営活動の展開を自ら選択するのを禁止したり制限したりすること、或いは不正な手段を利用して特定のプラットフォームのみに経営活動を限定すること(二)プラットフォーム内の経営者が自ら宅配便物流等、取引の補助的サービスの提供者を選択するのを禁止したり制限したりすること(三)その他プラットフォーム内の経営者の自主的な経営行為に干渉すること、を含みます。

四、消費者情報の保護。『弁法』は電子商取引の経営者が一括での承認、デフォルトでの承認、その他の承認との紐付け、インストールと使用の停止等の方法で消費者に経営活動と直接的な関係のない情報を収集、使用することに同意するよう強制したり、実質的に強制したと取れるような行為をしたりしてはならないと明確に規定しています。個人の生体情報、医療健康情報、金融口座情報、個人の位置情報等の機密情報を収集、使用する場合、その都度消費者の同意を得なければいけません。


二、労働争議事例の共有及び企業のコンプライアンス管理


事例の共有一

 李氏は2018年に深センの某企業で営業部長に就任。労働契約書では労働期限を2018年10月1日から2021年9月30日までと約定しており、同時に李氏の給与構成を基本給、歩合、ボーナス(年末賞与を含む)と約定し、会社は李氏の売上金額に基づき歩合及びボーナスを計算していました。2019年11月30日、李氏は会社との労働関係を解除しましたが、2020年2月初旬に李氏は会社がその他の従業員に年末賞与を支給したことを知り、会社に2019年の会社での勤務時間の比率に基づき年末賞与を支払うよう求めました。しかし、会社は既に李氏が離職していることから年末賞与を支給する条件には適合しないことを理由として年末賞与の支払いを拒否しました。

 当弁護士チームは李氏の委託を受けた後、李氏の話から会社の慣例では一般的に毎年2月に前年度の年末賞与を支給することになっており、企業の規則制度及び労働契約書内には年末賞与の支給条件に対して規定或いは約定がないことを把握しました。当弁護士チームは双方に年末賞与の約定及び計算方法、会社に年末賞与を支給する慣例がある状況、及び従業員に年末賞与を支給している等の事実があることを証明する十分な証拠を収集、提供しました。会社は依然として李氏は既に辞職しており、年末賞与を支給する条件には適合しないという見解を固持しましたが、規則制度或いは李氏との年末賞与の支給条件に関する明確な約定が存在することを証明する証拠を提供することができず、最終的には敗訴し、李氏の実際の勤務時間に基づき年末賞与を換算し支給しなければいけませんでした。

【弁護士による質疑応答】

一、従業員が離職した場合でも、企業は年末賞与を支給しなければいけませんか?

 企業が離職した従業員に年末賞与を支給しなければならないかどうかについては、主に企業に年末賞与の事実が存在するかどうか、及び離職した従業員が年末賞与を支給する条件に適合するかどうかによります。もし企業が年末賞与について支給条件を設定していれば、従業員は支給条件を満たす場合のみ年末賞与を受け取ることができ、もし企業の規則制度或いは労働契約書に年末賞与の支給条件に対する規定或いは約定がなく、同時に企業に年末賞与を支給している事実が存在する場合、企業は離職した従業員にも年末賞与を支給しなければいけません。

 注意しなければいけないのは、『深セン市の従業員の給与支給に関する条例』第十四条第二項の規定によると、労働関係の解除或いは終了時、従業員の月間賞与、四半期賞与、年末賞与等の支給周期に満たない給与については、従業員の実際の勤務時間に基づき換算し支給します。このことから、従業員が年末賞与の支給時に既に離職していることを企業が年末賞与の支給を拒否する際の抗弁事由としても成立せず、従業員が離職する場合、企業は従業員の実際の勤務時間に基づき換算、支給しなければならないことがわかります。

【企業のコンプライアンス管理】

 年末賞与関連の争議を避け、年末賞与を本当の意味で企業から従業員の積極的な業務に対する奨励手段とするため、企業は労働契約或いは規則制度内において年末賞与を支給する時期、基準、条件、性質等に対して明確に約定することに注意するべきです。年末賞与の支給条件において、企業は中途離職した従業員に年末賞与を支給しないと規定することはできませんが、年末賞与が企業の年度経営状況及び収益状況に基づき確定されること、及び具体的な支給に関する細則を約定或いは規定することができ、また民主的に制定、公示された規則制度を通して、業績に基づき審査した結果により年末賞与の支給及び金額を約定することができます。


事例の共有二

 呉氏は2020年10月6日に病気により亡くなり、同年11月に人力資源社会保障局が呉氏の死は労災ではない、或いは労災とは見なせないと判断しました。呉氏は亡くなる前、深センの某内装会社に勤務しており、双方には2020年5月1日から10月6日までの期間、労働関係が存在していましたが、当該の会社は呉氏のための社会保険に加入していませんでした。呉氏は2018年10月に深センに来て働き始め、内装会社に就職する前、呉氏は深センの某建築会社、深センの某サービス会社に勤務しており、この2社は呉氏のために一部の社会保険費用を納付していましたが、養老保険費用については納付していませんでした。呉氏の働く会社が全て養老保険に加入していなかったことにより、呉氏は業務外の理由での死亡に対する給付金を受け取ることができませんでした。

 当弁護士チームは呉氏の家族の委託を受けた後、状況を入念に分析し、呉氏は深センの某内装会社にて勤務した期間わずか5か月あまりで病気により亡くなっており、たとえ当該の会社が法に基づき養老保険費用を納付していたとしても、呉氏が以前勤務していた企業が法に基づき養老保険費用を納付していなかったことから、呉氏が亡くなった際、その遺族は依然として『深セン経済特区社会養老保険に関する条例』の規定に基づいた業務外の理由での死亡に対する給付金を受け取ることができず、もし生前勤務した最後の一社の企業のみが呉氏の家族の業務外の理由での死亡に対する給付金についての損害に関する責任を負う場合、根拠が不十分であり、当該の企業に対しても不公平であると考えました。このため、当弁護士チームは呉氏が生前に勤務したことのある3社の企業を訴え、これら3社が呉氏の生前の各企業での勤務期間の比率に基づきそれぞれに呉氏の家族に対し業務外の理由での死亡に対する給付金についての損害への賠償責任を負うよう求め、仲裁委員会と法院は全て当方の主張を支持し、呉氏の家族は業務外の理由での死亡に対する給付金についての損害を免れました。

【弁護士による質疑応答】

一、企業が従業員の社会保険費用を納付していなかった場合、従業員の業務外の理由での死亡に対する給付金についての損害に関して責任を負わなければいけませんか?

 法律に基づき従業員のために社会保険費用を納付することは企業の法定義務であり、企業が当該の義務を履行しておらず、従業員或いはその家族が法に基づいた社会保険の待遇を受けられなかった場合、企業はその賠償責任を負わなければいけません。このため、企業が法に基づき従業員のために養老保険費用を納付しておらず、従業員が業務外の理由で死亡した場合、企業は法定の基準に基づき死亡した従業員の家族に業務外の理由での死亡に対する給付金を支払わなければいけません。

 このほか、『深セン経済特区社会養老保険に関する条例』第三十二条の規定によれば、従業員が業務外の理由で死亡した場合、その遺族が業務外の理由での死亡に対する給付金を受け取れる条件は当該の従業員の深セン市での基本養老保険への加入が累計満6か月であることです。注意すべきは、ここで要求されているのは「累計」であり、「連続」ではなく、即ち当該の従業員の生前の深セン市での勤務期間が満6か月であれば、この期間が途中で中断していたとしても、その中断した期間の長さに関わらず、遺族は全て業務外の理由での死亡に対する給付金を受け取ることができるという点です。これにより、もし従業員が生前、過去に複数の企業で働いており、その一部或いは全ての勤務したことのある企業で法に基づいた養老保険の納付がされていなかった状況が存在する場合、従業員の生前の各企業での勤務期間の比率に基づき各企業がそれぞれに相応の支払責任を負わなければいけません。

【企業のコンプライアンス管理】

 法に基づき従業員のために社会保険費用を納付するのは企業の法定義務であり、もし企業が従業員のために社会保険費用を納付しておらず、従業員に労災が発生した場合、企業は比較的大きな損害を受けることになり、従業員が業務外の理由で死亡した場合、企業も法定の基準に基づき死亡した従業員の家族に対し業務外の理由での死亡に対する給付金を支払わなければいけません。このほか、企業は行政処分を受ける可能性もあります。このため、当弁護士チームは企業が法に基づき従業員のために社会保険費用を納付する義務を履行し、企業のコンプライアンス管理を徹底し、不必要なリスクを回避するようご提案いたします。

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