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事例 / ニュース

【車衛東弁護士チームニュースレター】2022年3月分(第二十号)

中国の最新法令情報や車衛東弁護士チームが担当した案件を通して企業のコンプライアンス管理等について解説するニュースレターの日本語版をお届けいたします。


一、最新法律情報


一、2022年1月16日、広東省第十三期人民代表大会常務委員会第三十九回会議は『広東省外商投資権益保護条例』(以下略称『条例』)を可決しました。これは全国で最初の地方版外商投資権益保護条例であり、2022年3月1日から施行されます。

弁護士による解説

1.外商投資に対する平等な保護を強調し、公平な競争が行われる市場環境を作り出します。『条例』は、広東省が国の規定に基づき外資の参入前に内国民待遇とネガティブリスト管理制度を実施することを規定しています。外資参入のネガティブリスト以外の分野においては、各級の人民政府及びその関連部門は外資に対する参入制限を設けてはいけません。同時に、『条例』は各級の人民政府及びその関連部門が政府による資金の割り当て、政府の投資プロジェクトの建設、土地の供給、税金の減免、資格の認可、基準の制定、プロジェクトの申告、役職名の評価、人事政策等の面で法に基づき外資系企業と内資系企業を平等に扱い、外資系企業と内資系企業が平等に政府の購買、入札、土地の譲渡、財産権の取引等に参与できることを規定しています。

2.外資の知的財産権の保護を重視しています。『条例』は、地域や部門を超えて迅速かつ協調的に知的財産権を保護するためのシステムを構築し、知的財産権の行政による法執行・保護体制を改善し、法に基づき外国人投資家、外資系企業の知的財産権に対する侵害行為を処分し、故意に知的財産権を侵害する行為については、状況の深刻な場合、法に基づき懲罰的な賠償制度を適用することを規定しています。外国人投資家、外資系企業は法に基づき専利(特許、実用新案、意匠)申請、商標登録、著作権時及び知的財産権に関する取引活動を行うことを奨励しています。外資系企業が知的財産権の速やかな審査、迅速な権利確認と権益保護の面でのサービスを受けられることを保障しています。関連する国家機関の職員は法に基づき職責を履行する過程において知り得た外国人投資家、外資系企業の企業秘密を保護し、企業秘密の司法による保護の強化、外国人投資家や外資系企業の合法的権益の十分な保護をしなければいけません。

3.外国人投資家、外資系企業からの苦情の迅速な処理。『条例』は、苦情処理機関が5業務日以内に外国人投資家、外資系企業から苦情を受理するか否かを決定し、苦情を受理してから20営業日以内に受理した苦情に関する事項の処理を完了しなければいけないことを規定しています。

4.ベイエリアにおける高度人材は出入国に関する優遇措置を受けることができます。『条例』は、広東・香港・マカオベイエリアにおいて高度人材や希少な人材として認定を受けた人材は規定に従い出入国、停留・居留等に関する優遇措置が受けられることを規定しています。外資系企業が誘致した外国人高度人材が就労許可の手続きをする場合、国の規定に基づき年齢、学歴と職歴の制限を受けません。外資系企業が誘致する外国人専門家が就労許可の手続きをする場合、国の規定に基づき年齢、学歴、職歴等の制限が適切に緩和されます。

当弁護士チームの考察:『条例』は効果的に外国人投資家、外資系企業の合法的権益を保護し、外国資本の投資環境を最適化し、新時代の広東省による継続した開放の拡大、積極的且つ効果的な外国資本の利用、全面的な開放の新たなパターンを構築する自信と決意を顕著に示しています。また、開放的で安定した投資環境は幅広い外国人投資家、外資系企業の広東省での投資に対する自信を強化し、今後より多くの外国人投資家、外資系企業が広東省で投資を行い、より多くの国外の高度人材が広東省で働き、広東省の経済をさらに発展、繁栄したものにしていくと予想されます。


二、疫病流行期間中の給与支給に関する一問一答


質問一、疫病流行の影響により通常の労働が提供できない労働者について、企業は労働契約を解除することができますか?

回答:法に基づき隔離治療または医学的観察を受けている新型コロナウイルス肺炎の患者、ウイルスの保有者、疑似症患者、濃厚接触者、及び政府による隔離措置またはその他の緊急措置により通常の労働が提供できない労働者について、企業はこれを理由として労働契約を解除してはいけません。


質問二、雇用者が疫病流行の予防・抑制期間中に期間満了した労働契約を終了させ、労働者が契約の履行の継続または賠償金の支払いを求めた場合、これは支持されますか?

回答:労働契約が隔離治療期間、医学的観察期間、及び政府による隔離措置またはその他の緊急措置が取られている間に期間満了する場合、労働契約の期限はそれぞれ労働者の隔離治療期間、医学的観察期間、隔離期間満了または政府による緊急措置が終了するまで延期されます。

雇用者が上述の期間中に期間満了した労働契約を終了させた場合、労働者は労働契約の履行を継続するよう求める権利を有します。労働者が履行の継続を求めない、または労働契約が既に履行できない状況の場合、雇用者に対し経済補償基準の2倍の金額の賠償金の支払いを求める権利を有します。


質問三、労働者が政府の疫病流行の予防・抑制措置に違反して治療、医学的観察、検査、隔離を拒否した場合、雇用者は労働契約を解除することができますか?

回答:労働者が政府の疫病流行の予防・抑制措置に違反して治療、医学的観察、検査、隔離を拒否し、雇用者の生産・経営に影響を与えた、または服務規程や雇用者の規則制度への著しい違反があった場合、雇用者は労働者が雇用者の規則制度への著しい違反を理由として、労働契約を解除することができます。


質問四、労働者が隔離期間中の給与・報酬を求めた場合、どのように処理すべきでしょうか?

回答:新型コロナウイルス肺炎の治療期間または医学的観察期間、及び政府による隔離措置の実施期間中の給与・報酬について、労働者は雇用者に対し通常どおりの労働時間の給与の支払いを求める権利を有します。

但し、労働者が政府による疫病流行の予防・抑制規定を遵守しなかったことにより隔離治療または医学的観察を受ける状況を引き起こした場合、労働者には当該の期間中の給与・報酬を請求する権利はありません。


質問五、疫病の流行により居住区が封鎖され、労働者が通常どおり出勤できない場合、給与はどのように支給するべきでしょうか?

回答:

1.法に基づき隔離を実施している新型コロナウイルス肺炎患者、ウイルスの保有者、疑似症患者、濃厚接触者である労働者について、雇用者は通常の労働を提供した場合と同じく隔離期間中の給与を支払わなければいけません。

2.労働者が上述の隔離には該当しない場合、以下のとおり状況に応じて別々に対応します。

2.1雇用者が電話、インターネット等の方法を通じて労働者が通常の労働を提供できるよう調整できる場合、通常の労働を提供した場合と同じく給与を支払います。

2.2雇用者が雇用者の年次有給休暇、雇用者が自ら設けている福利による休暇等の各種休暇を用いて調整する場合、関連する休暇の規定に基づき給与を支払います。

2.3労働者が他の方法を通じて通常どおりの労働を提供できず、休暇も取っていない場合、操業・生産停止期間中の給与支給に関連する規定を参考にし、労働者と協議を行います。

2.3.1給与支払の1周期以内の場合、労働契約の約定した基準に応じて給与を支払います。

2.3.2給与支払の1周期を超える場合、雇用者により生活費を支給します。生活費は現地の最低賃金の80%を下回ってはいけません。


質問六、雇用者の操業・生産の開始・終了日はどのように計算しますか?

回答:操業・生産停止の当日から操業・生産再開の前日までを連続して計算します。

給与支払の1周期は最長でも30日を超えないものとします(休日、法定の祝祭日等の各種休暇は除外しません)。

給与支給日がこの期間内である場合、操業・生産停止に関連する支払基準に基づく区分での給与の計算には影響しません。

雇用者が操業・生産停止後に再開し、更に再び停止した場合、1度中断する毎に改めて計算し直す必要があり、2回の操業・生産停止期間を累加して計算することはできません。


質問七、労働者が隔離期間満了後または政府による緊急措置の終了後に復職を求め、これを雇用者が拒否した場合、どう対処すべきでしょうか?

回答:新型コロナウイルス肺炎患者の退院後、疑似症患者が新型コロナウイルス肺炎に感染していないと診断された後、新型コロナウイルス肺炎の濃厚接触者、疫病の流行が深刻な地域から深センに戻ってきた労働者、及びその他疫病の流行の予防・抑制の必要から集中隔離または自宅隔離していた労働者が医学的観察期間満了後に復職を求め、雇用者が正当な理由なくこれを拒否した場合、通常の労働時間分の給与を支払わなければいけません。

雇用者が労働者の復職を拒否し、且つ合理的な期間を超えて給与を支払わない場合、労働者は雇用者が遅滞なく満額の労働報酬を支払わなかったことを理由として、労働契約の解除と経済補償金の支払いを求めることができます。


三、日本の投資家が中国で賃貸借を行う際の

重要な問題、紛争の起きやすい問題及びリスクの提示

近年、多くの日本の投資家が中国で投資を行っていますが、2020年1月1日からの『中華人民共和国外商投資法』の実施に伴い、中国の外商投資条件は更に緩和され、より多くの日本の投資家が中国に投資にすることになると考えられます。投資の過程でまず解決しなければならないのは工場の問題であり、当弁護士チームはこれまでに担当したケースを踏まえ、工場を賃借する過程において注意すべき重要な問題に対し、紛争の起きやすい問題とリスクを提示いたします。日本の投資家が投資の過程における法的リスクの軽減、または対応をする際の一助となれば幸いです。

一、賃貸人の属性、信用状況及び工場の所有権の帰属

工場を賃借する際、まず賃貸人の属性が、国有主体、株式合作会社、会社法人または自然人なのかに注意しなければいけません。また、異なる属性に対し、それぞれ紛争の起きやすい問題に注意が必要です。

(一)賃貸人が国有の主体である場合、慣行においては往々にして国有不動産の不動産管理部門が賃貸借契約の主体になり、この際に賃借人が注意しなければならないのは、不動産管理部門が既に賃貸の授権書を取得しているかどうかです。また、賃貸料及び敷金を支払う際、賃借人は契約を締結する主体と賃料を受け取る主体が一致しているかどうかについて特に注意しなければいけません。もし一致しない場合、必ず賃貸人に署名のある支払説明の文書を提供するよう要求し、賃借期間中に従業員がこの規則の弱点を利用し私利を図り、賃借人の利益を損なうことを避ける必要があります。

例として、当弁護士チームがサービスを提供する深セン市宝安区にある某企業のクライアントの場合、賃借する工場の所有権の帰属者は国有の主体でしたが、工場の賃貸時に敷金の支払いが賃貸人の銀行口座ではなく、有効な説明文書も取得していませんでした。そのため、賃貸人の従業員がその職位と権利及び支払いにおける弱点を利用し、敷金の私物化等を行い、当該のクライアントに重大な損失を引き起こしました。

(二)賃貸人が居住区(社区)を事業者とした株式合作会社の場合、深セン市の現在の状況から見て、多くの不動産は財産権証明書を所得しておらず、もし当該の不動産で会社の工商登記をする場合、実際の手続きにおいて何らかの支障を来す可能性があります。この時、賃借人は賃貸借契約書内で、賃貸人が当該の不動産は会社の工商登記を行う上で支障がないことを保証し、また、関連する手続きについて協力をするという内容が明記されるよう注意しなければいけません。このほか、別の賃借人が一度自ら賃借してから転貸する不動産について、賃借人は慎重に選択をし、不動産のある区域の規定や政策を詳細に理解してから賃借し、規定違反により賃貸借契約が無効になることで、損失を被ることを避けなければいけません。例えば、深セン市宝安区は株式合作会社の転貸用途、転貸比率等について厳格な制限があり、株式合作会社の大口の不動産転貸は、産業科学技術園区、産業孵化器(インキュベーター)、文化創意園区または双創(スタートアップとイノベーション)空間等の産業形態を計画・建設するために使用されなければいけません。面積が5000平方メートル未満の場合、賃借人が自ら使う不動産の面積が70%を超えなければならず、転貸不動産の面積は30%を超えてはいけません。

同時に、賃借人も前述の第一条第(一)項の支払注意事項を参照し、契約を締結する主体と賃料を受け取る主体の一致をできる限り保たなければいけません。

(三)賃貸人が会社法人の場合、賃貸借契約書に当該の賃貸行為が会社としての行為である(例:既に株主会で決議されている/董事会で審議されている)ことが記載されていなければいけません。そうでない場合、問題が発生した際、本来であれば会社が負うべき法的責任を個人に追及することが難しくなります。

(四)賃貸人が自然人である場合、安定した工場の賃借の持続可能性を考慮し、当該の自然人が多くの訴訟案件を抱えているかどうか、及び被執行者または信用失墜被執行者であるかどうかを確認しなければいけません。これにより、一方では賃貸人自身の信用状況を判断し、将来的な賃貸人の道徳的な信用喪失による違約のリスクを事前に見積もるとともに、もう一方では賃借後に執行により賃貸借契約が終了されることで賃借人に損失が生じることを防ぎます。もし自然人の不動産が財産権の証明書を取得していない場合、不動産は収用、徴用、立ち退きとなる比較的大きなリスクがあり、工場の賃貸借の安定性を予測することができないため、賃借人は必ず慎重に考慮し、できれば賃借しないことをお勧めします。

二、不動産の所有権の帰属の更なる精査

賃借人は工場の所有権の帰属に関する情報を確認し、賃貸人が工場の敷地の完全な処分権を有しているかどうかを判断しなければいけません。もし賃貸人が建物の所有権者である場合、賃借人は財産権証明書の提供を要求しなければいけません。もし賃貸人が非所有権者である場合、賃貸を行う権利を有していることを示す証明書の発行を要求しなければいけません。例えば、一次賃借人が二次転貸をする場合、一次賃貸借契約書の中で転貸を禁止する規定が取り決められてないか、既に権利者の転貸行為に対する同意を得ているかどうか、一次賃貸借期限は二次転貸の賃貸期限をカバーできるかどうかを確認し、また、不動産権利証書を所得しなければいけません。関連する不動産権利証書またはその他の証明書類、一次賃貸借契約書等は、賃貸借契約の付属文書とする必要があります。

契約書を締結する前に賃借人は賃貸人に不動産登記部門が印刷した不動産情報照会表の提供、または賃貸人と一緒に不動産登記部門に行き印刷することを要求し、再度工場の不動産所有者の情報を確認し、また、工場が差し押さえられていないか、担保にされていないかの確認をしなければいけません。もし工場が貸出前に既に裁判所に差し押さえられている、または担保にされている場合、裁判所が当該の建物について強制執行する、または抵当権者が抵当権を行使すると、賃貸借契約が終了されてしまうため、賃借人に予測のできない損失をもたらすことになります。

三、賃貸借期限及び賃料、敷金

賃借人に工場を賃借する予定がある場合、事前に対象の工場所在地周辺の同類の工場の市場賃貸価格及び直近数年の賃料の上下幅に関する状況を調査し、賃貸人との交渉で価格を決定する際に価格のボトムラインとすることをお勧めします。

賃料支払いの規定で賃料の支払時期、支払方法、特に保証金、敷金の支払いと返却の条件と時間を明確にしなければいけません。賃貸借期間が比較的長い場合、契約書内で賃料調整の方法を明確にする必要があります。同時に、契約書内で不可抗力または工場の土地が徴収、収用される等、賃貸人側の原因ではなく賃借物が使用できなくなった場合の処理案を明確にしなければいけません。工場の建物、土地が徴収または収用された場合、立退き対象者への補償費、生産・操業停止への補助金及び賃借人が新たに建設した付属施設、建築物、構築物、増設付属施設に対する補償等が発生する可能性があります。双方は契約書内で当該の補償費用の帰属及び賃料の減免と返還事項を明確にしなければいけません。

賃貸借の開始・終了の時期は具体的に明確にするべきであり、賃貸借の期限は二十年を超えてはいけません。『中華人民共和国民法典』の関連規定によれば、賃貸借期限は二十年を超えてはならず、二十年を超えた部分は無効になります。現在、中国の都市建設の速度がとても早いため、一部の地区の不動産価格は都市開発計画により価格の上昇幅が比較的大きく、一部の賃貸人はより多くの利益を得るため、違約する形で契約を満期前に終了させ、別途高額で他の賃借人に貸し出す可能性があります。このため、賃借人は賃貸契約書内で、もし賃貸人が理由なく契約を終了させる場合、比較的高い違約金を支払い、賃借人が想定する損失を賠償しなければならない旨を約定することをお勧めします。これにより違約のコストを引き上げて賃貸人が違約する可能性を引き下げ、賃借人の損失を低減させます。

四、水、電気、ガス、不動産管理費、汚染物質排出費等の基準

慣行において、個々の賃貸人が悪意をもって水、電気、ガス、不動産管理費、汚染物質排出費等の基準を引き上げることがあるため、賃借人は賃借前に工場所在地の政府が公布した各種料金標準を確認し、賃貸人と協議する際の根拠とし、公正な価格を確定するようお勧めします。賃貸借契約を締結する前に、賃借人は賃貸人と水、電気、ガス、不動産管理費、汚染物質排出費等の費用の基準を明確にし、契約締結の際に入念に契約書の条項を確認し、取り決めの内容が不明確、概念のすり替えや曖昧な表現等によるその後のトラブルを避けなければいけません。

当弁護士チームがサービスを提供する広東省恵州市にある会社制のクライアントは、賃貸人が無断で電気料金を1度あたり1.2-1.3元引き上げ、これにより当該のクライアントの工場使用コストが増加し、毎月5万元-6万元多く支出していました。

五、改装の許可申請及び原状回復等の義務の負担

工場の改装には一定期間の時間が必要であり、また、届出、許認可手続きが必要になる可能性があります。もし賃貸人が履行することが確定している場合、改装の期限、届出や許認可の義務を履行する主体及び当該の義務を履行しなかった場合の責任を明確に約定しなければいけません。賃貸借期間満了後、賃借人が工場の改装物を撤去できるかどうか、撤去と原状回復の義務はどちらが負担するかの問題、及び賃貸借契約終了後に撤去のできない部分を換算した補償費の問題について、全て約定する必要があります。

当弁護士チームがサービスを提供する深セン市宝安区にある会社制のクライアントは、工場の「原状回復」事項について明確に約定していなかったため、工場の移転時に家賃2か月分の回復費用を余分に支払わなければいけない状況を引き起こしました。

六、工場建物の補修義務

賃借人は実情に応じて、工場の補修義務の主体を明確にする必要があるかどうかを考慮することができます。『中華人民共和国民法典』の規定によれば、明確に約定されていない場合、賃貸人が補修義務を負うことになっています。賃貸人が補修義務を履行しない場合は、賃借人が自ら補修し、補修費用を賃貸人に負担させることができます。賃貸借物件の補修により賃借人の物件の使用に影響を及ぼされた場合は、状況に応じて賃料を減額する、または賃貸借期間を延長しなければいけません。もし賃貸人が補修義務を負担することを約定した場合には、補修の際の通知方法、担当者、対応速度、費用等について詳細に約定しなければいけません。同時に、賃借人に補修義務の履行を促し、損害を適切に補うために、補修に不都合がある場合の違約金、賠償金や損失の計算方法も約定しなければいけません。

七、消防・環境保護責任

賃借人は工場建物が消防検査に通過した際の書類を確認し、賃貸借契約書で工場が既に消防検査に合格していること、消防検査に合格していない場合の責任、違約金及び合格していないことにより賃借人に与える損失は賃貸人が負担することを明記しなければいけません。双方は別途消防、環境保護責任書を締結することもでき、必要な場合は契約書内で火災保険等の傷害・災害保険に加入する義務を負う主体を約定することができ、加入しなかった場合にリスクを負う主体を明確にする必要があります。

工場の賃貸借時、もし当該の工場が既に関連する建設工事を完了している場合、賃借人は当該の建設項目が既に環境アセスメントを取得したかどうか、既に取得した環境アセスメントの建設工事は会社の実際の業種、生産能力等に適合しているかを検証しなければいけません。当弁護士チームがサービスを提供する広東省恵州市にある某会社制のクライアントは、賃借前には顧問弁護士がおらず、賃貸借契約の約定が明確でなかったことにより、工場を賃借してから約9か月が経っても、依然として賃貸人側の原因で環境保護の検査に合格しなかったため操業開始ができず、莫大な損失を被りました。

八、工場の売却及び譲渡

現行の法律では「賃貸借期間中に賃貸の目的物の販売があったとしても賃貸契約に影響を与えない」、「賃借人に優先的に購入権が与えられる」という規定がありますが、実際には双方による具体的な約定に準じます。このため、賃借人は賃貸契約書内で財産権者が賃貸借の目的物を販売する際の事前告知義務、権利保障、損害賠償について明確にし、記載しなければいけません。もし賃借人に購入の意思がある場合は、契約書上内で優先購入権の具体的な行使条件と手順を明記するようお勧めします。

九、工場の引き渡しと返還

賃借人は賃貸契約書内で工場の引き渡しをする時間を明確にし、賃貸人が引き渡しを延期した際の賃借人の契約解除権、及び賃貸人の違約責任を約定しなければいけません。紛争を避けるため、もし工場の付属部分に重要な施設や設備がある場合、引き渡し明細書を作成して双方が署名し、工場の返還時に双方が署名した引き渡し書に準ずるようお勧めします。

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